【難易度】★★★★☆
先日、組織マネジメント研修を受講する機会がありました。
「自己理解を深める」というテーマのもと、『ジョハリの窓』というフレームワークを使い、ディスカッション形式の研修でした。
新たな気づきを得られる研修でしたので、紹介いたします。
「ジョハリの窓」とは?
ジョハリの窓(Johari Window)とは、自己分析をおこなう際に使用する心理学モデルのひとつです。
「自分から見た自分」と「他人から見た自分」の情報を切りわけて分析することで、自己理解を行うというものです。
1955年にアメリカの心理学者ジョセフ・ルフトとハリ・インガムが「対人関係における気づきのグラフモデル」を発表し、これが後に、2人の名前を組み合わせた「ジョハリの窓」と呼ばれるようになりました。
ジョハリの窓は、
「自分をどのように公開するか?」
あるいは
「自分をどのように隠すか?」
という、他者とのコミュニケーションの円滑化において重要な考え方にもとづき提案されたものです。
自分自身をどれだけ表現しているか、を知ることで客観的に見た自分の姿を理解できます。

ジョハリの4つの窓
ジョハリの窓は、自分の特性や自己理解において「4つの窓」に分類されます。

それぞれの特徴は以下のとおりです。
1. 開放の窓

「開放の窓」とは、自分も他人も知っている自己のことです。
「相手から○○と思われているかもしれない」
という他人からの目
「自分にはこんな一面があるかもしれない」
という自分の主観
他人からの目と自分の主観が一致している状態といえます。
開放の窓が大きくなることで、相手に対する親近感や信頼感が高まり、コミュニケーションは円滑化すると言われています。
2. 盲点の窓

「盲点の窓」とは、他人は知っているが、自分では気づいていない自己のこと。
わかりやすい例として「思わぬ長所」や「思わぬ指摘」などがあげられます。
相手に言われてはじめて気づくケースが多いです。
気づかないうちに相手を不快にさせていることもあるため、窓をできるだけ小さくしておくのがベターです。
しかし、盲点の窓は「自分で気づいていないと小さくできない」という欠点があるため、人に聞いて自分の盲点を探すことがポイントとなります。
3. 秘密の窓

「秘密の窓」とは、自分だけが知っていて、他人にはまだ知られていない自己のことです。
例として「トラウマ」や「コンプレックス」があげられます。
秘密の窓は小さいほど良いとされ、秘密の窓が大きいということは「隠し事が多い」ともいえるため、なかなか相手に打ち明けて話せていないことを意味します。
秘密の窓を小さくしてありのままの自分を見せることで、「開放の窓」が大きくなり、コミュニケーションが円滑になると言われています。
4. 未知の窓

「未知の窓」とは、自分も他人も知らない、誰からもまだ知られていない自己のことです。
盲点の窓と秘密の窓を小さくして、開放の窓を大きくすると、未知の自分に気づくことに繋がります。
「まだ知らない自分」に気づくことで、自己成長のチャンスが訪れると言われています。
ジョハリの窓の実施方法
実施方法としては、主に下記の方法があります。
1.自由記入 「明るい」「大胆」など、思いつくままに各自で記入する方法
2.事前に要素(キーワード)をいくつかあげて選択する方法
今回私が実施した方法は「2」の方法で、7名で実施しました。
【実施手順】
診断の手順を簡単に説明すると下記の通り
・以下の性格の要素19ポイントを書いた紙とペンを用意し、その中から、自分に当てはまる要素を選んで、紙に書き出します。
<性格の要素19のポイント>
① 頭が良い
② 発想力がある
③ 段取り力がある
④ 向上心がある
⑤ 行動力がある
⑥ 表現が豊か
⑦ 話し上手
⑧ 聞き上手
⑨ 親切
⑩ リーダー資質がある
⑪ 空気が読める
⑫ 情報通
⑬ 根性がある
⑭ 責任感がある
⑮ プライドが高い
⑯ 自信家
⑰ 頑固
⑱ 真面目
⑲ 慎重
・自分以外のメンバーには、相手の性格に当てはまると思う要素を書いて渡す
・全員分を回して書いていき、最終的に自分のものが手元に戻ってくる
・その紙をもとに、自分が書いた性格の要素と周りが書いた要素が重なっている場合は「開放の窓」に記載
・さらに、周りが書いていて、自分は書いていない要素を「盲点の窓」に、
自分が書いていて周りが書いていない要素を「秘密の窓」に、
自分も周りも誰も書いていない要素を「未知の窓」に書く
書き出された結果を診断すると、主観的な自分と客観的な自分の違いを認識できます。

「盲点の窓」 ~自分は気づいていないが、他人から見えている~
私の場合は、
・情報通
・空気が読める
という要素になりました。
自分ではそう思っていませんでしたが、他人からはそのように見えるという点は嬉しいですね。
このように「盲点の窓」は、相手からのフィードバックにより気づく部分になります。
「秘密の窓」 ~自分は知っているが、他人には知られていない~
・真面目
・慎重
といったディフェンシブな面が強いと自認していましたが、今回は他の方からは挙がって来ませんでした。
意見交換の中で複数の方に聞いてみましたが、普段のコミュニケーショの中では「慎重さ」はそれほど感じません(!?)とのこと・・・そう言われれば、事前準備段階で慎重さはあるものの、対人面では表れていないかもしれません。
そのことに気付けたことは新たな発見でした(慎重さが前面に出てるよりも、良かったという意味で)。
「秘密の窓」については、自分から周囲へ発信していくことで、「開放の窓」を広げていき、コミュニケーション円滑化を向上させていくことが重要とのことです。
自分で「真面目さ」をアピールすることは一長一短あるかと思いますが、「慎重」な部分は仕事相手に安心感を与える意味で、もうちょっと開示してもいいかな?などと感じました。
ジョハリの窓による効果
ジョハリの窓を通じて、
周囲の人たちに「自分はこんな人間だ」と自己開示することで「③秘密の窓」を小さくしていったり、
他者からのフィードバックを受け入れることで「②盲点の窓」を小さくしていくことができます。
(それはつまり、「①開放の窓」を広げていくということ)
それによって、わからなかった「④未開の窓」の部分が明らかになり、
自分の未知の才能や長所を見つけやすくなります。
そしてそれは同時に、対人関係における円滑なコミュニケーションをも促進していくことに繋がります。

出所:https://motivation-up.com/motivation/johari.html
「未開の窓」部分は”チャレンジ”していくことで、開拓していくことが効果的との話でした。
自己開示を行いチーム内の関係性を向上させる
「自己開示」を行うことでチーム内の関係性を向上させることが期待できます。
「ジョハリの窓」で言えば、秘密の窓を小さくするということを意味します。
どうしても、秘密の窓が大きい場合、言いたいことが言えなかったり、思い込みで話を進めてしまったりする傾向があり、その結果として、周囲との「認識のズレ」が広がりやすくなってしまうと言われています。
自己開示を積極的にするために意識すべきことは2点。
1つは、5W1Hを意識したコミュニケーション。
会話の中で、5W1Hをしっかりと伝えることで、自己開示の情報量を増やすことができます。
もう1つは、自分への感情質問。
自分に「楽しかったことは何か」「すごいと思ったことは何か」などといった質問を投げかけ、それに答えていくことで、感じたことを具体的に伝えられるようになります。
他者から評価される環境をつくって人間関係を円滑にさせる
2つ目のポイントは、他人から評価される環境を作ることで人間関係を円滑にすることです。
「ジョハリの窓」で言えば、盲目の窓を小さくするということになります。
盲目の窓が大きい場合、気づかぬうちに相手を傷つけてしまったり、不快感を与えていたりします。
「自分が他人からどう見られているのか」を認識することで、周囲との人間関係が良くなり、チームとしての一体感が生まれやすくなると言えます。
チャレンジできる環境をつくり、新しい自分に気づけるようにする
コーチングの効果を引き出すためには、新たな気づきが不可欠となってきます。
そのためにも、重要なのはチャレンジできる環境を作ることです。
これは、「ジョハリの窓」で言えば未知の窓を大きくするということになります。
具体的には、部下に新規事業を任せてみる、今までとは異なる業務にも携われるようにするなどの取り組みが該当します。
人材育成の視点で社内研修を実施する
「ジョハリの窓」は、社員研修においてもよく活用されます。
自己を見直すことで自分自身の特性や強みを理解し、能力を発揮しやすくなるからですね。
まずは、「ジョハリの窓」で自己分析に取り組み、「自分はどう働いていけば良いか」についてじっくりと考えてみることが効果的です。
結果として、チームの絆が高まり、メンバー一人ひとりが能力を発揮しやすい職場に繋がることが期待されます。
「ジョハリの窓」は自己啓発や人間関係の改善に効果があるだけではなく、潜在的な力を発揮するきっかけにもなり、組織としての生産性向上も期待できると言われています。
社内研修でやってみるのもいいですね。
