“情報の偏り”が招く危険性【フィルターバブル】

【難易度】★★★☆☆

【この記事では】
・見たい情報だけが集まり、見たくない情報は遮断されるという「フィルターバブル」について説明しています。
・現代社会の落とし穴になりうる「情報の偏り」により、ユーザーの視野が狭くなっていくという“仕組み”が理解できます。

疑問に感じたことや解決したい課題の答えを示してくれるWebサイトやSNSは、日常生活に浸透しています。

便利な反面、その機能や仕組みに起因して、考え方や視野が狭まってしまう危険性があることをご存じでしょうか?

情報社会から孤立させる危険性があるという「フィルターバブル」について理解することで、情報の偏りを防ぐことができるようになります。

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【この記事のPOINT】

フィルターバブルとは

総務省の「情報通信白書」では、フィルターバブルを以下のように定義しています。

アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境を指す。

つまりフィルターバブルとは、アルゴリズムによって「見たい情報が優先的に表示される」「見たくない情報が遮断される」環境が構築され、ユーザーの視野が狭くなっていくという仕組みです。

出所:https://staff.persol-xtech.co.jp/hatalabo/it_engineer/586.html

なお、フィルターバブルは、提唱者であるアップワージー社のCEOイーライ・パリサーが自身の著書「The Filter Bubble」で触れたことによって世間に浸透したといわれています。

フィルターバブルの影響はWebページの検索結果のみならず、Webサイト閲覧時に表示される広告やニュースにおいても同様です。

何げなく目にしているインターネットの情報はランダムに表示されているのではなく、検索アルゴリズムの仕組みに則り、カスタマイズされて表示されているのはご存じの通りです。

エコーチャンバーとは

フィルターバブルと似ている意味合いとして、「エコチェンバー」がたびたび言及されます。こちらも総務省の「情報通信白書」に記載があります。

ソーシャルメディアを利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってくるという状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえたものである

エコチェンバーはTwitterやFacebook、YouTubeなどのソーシャルメディア上で似たような意見が集まる“現象”を意味しており、その現象はフィルターバブルという“仕組み”によって引き起こされていることになります。

出所:https://staff.persol-xtech.co.jp/hatalabo/it_engineer/586.html

日常生活における例

私はAmazonミュージックという音楽サブスクリプションサービス(定額聴き放題)を利用していますが、おすすめに自分が好むアーティストや楽曲が表示されてきます。

もともと

「今まで聴いてこなかったような色々なジャンルも聴いてみたい」

という思いから定額聴き放題サービスを利用したのですが、これらの仕組みにより、これまでと同じような音楽をついつい聴いてしまいます。

また、TwitterやFacebookなどのSNS上で似たような意見が集まる“エコーチャンバー”についても、フォローしている人達や、集団の中で発信される意見を見たときに「自分たちが多数派だ」と勘違いすることも度々あります。

ちょっと危険だな〜、と思うことは私自身よくありますね。

フィルターバブルが起こる仕組み

フィルターバブルが起こる仕組みは、以下に挙げる機能と密接に関係しています。

・トラッキング機能
・フィルタリング機能
・パーソナライゼーション機能

これらは本来、ユーザーの利便性向上のために開発された機能です。しかし高性能化が進んだ結果、フィルターバブルを引き起こす原因にもなっています。

トラッキング機能

Web上におけるトラッキング機能とは、Webサイトに訪れたユーザーを追跡する機能のことです。
どこを経由してサイトを訪れたのか
どのくらいの時間滞在したのか
これらの情報は、Cookieと呼ばれるテキストファイルによって収集できます。
Cookieが適用されると、Webサイト閲覧時に小さなテキストファイルが発行され、ユーザーのPCやブラウザに保存されます。
検索エンジンはこの情報を収集することで、ユーザーの好みや趣向を把握。定量データ化することによって、Web広告などの効果測定に利用されています。

フィルタリング機能

フィルタリング機能とは、トラッキング分析したユーザーの好みや傾向に合わせて検索結果を表示させる機能のことです。
ユーザーの好みや傾向に合致したWebサイトを優先して表示させるということは、ユーザーが好まない情報を表示させない機能であるとも言い換えられ、フィルターバブルを構成する要因となります。

パーソナライゼーション機能

トラッキング機能やフィルタリング機能をさらに個人最適化するのがパーソナライゼーション機能です。
パーソナライゼーション機能がおよぶ範囲は、検索結果に留まりません。ニュースサイトの「おすすめ記事」やSNSの「知り合いかも」などもパーソナライゼーション機能によってカスタマイズされています。
ユーザーに便利な機能である一方で、ユーザーに最適でないと判断されたWebサイトや情報は表示されないこととなり、フィルターバブルを加速させる要因になっています。

フィルターバブルの問題点

総務省の「情報通信白書」では以下の3つを問題点として注意喚起しています。

・ひとりずつが孤立する
・目に見えない
・ユーザー自身が選んだわけではない

テレビや新聞、雑誌などは閲覧するか否かを能動的に選択できます。
また、テレビ番組などは不特定多数が視聴するため、情報の共有も容易です。

一方、フィルターバブル環境では、ユーザーは知らず知らずのうちにパーソナライズされた状況下に置かれています。
同じ検索ワードを入力したとしても、個々人によって行き着く先は異なるため、同じ意見を持ち合わせた人でも同じ検索結果に行き着くとは限りません。
情報や体験の共有も難しくなってくるため孤立する危険性をはらむ、という点で問題視されているんですね。

おわりに

フィルターバブルはユーザーに高い利便性をもたらしている点は周知の事実です。
この時代は、フィルターバブルのメリット・デメリットを理解した上で、検索エンジンやSNSと上手に付き合っていくことが重要だと思います。

しかしながら、フィルターバブルは視野を狭める可能性があることを常に意識することが重要です。

情報の受け手は、信じたい情報を信じ、自分の意見を「正しい」と強固に信じこむことは、自分とは異なる考え方を排除することにもつながっていきます。

異なる意見を持つ者同士の対話が阻害され、断絶が生まれてしまうことがないよう、注意することも大事ですね。
情報を得るときにはインターネットだけでなく、新聞や雑誌、本などの紙媒体を利用することも、効果的だと思います。

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