強い組織のつくり方【グレイナーモデル】

【難易度】★★★★☆

【この記事を読むことで】
・組織の規模や継続年数など、企業のライフサイクルに応じてとるべき「強い組織のつくり方」が把握できます。
・組織づくりの「グレイナー5段階企業成長モデル」の概要を把握できます。

【この記事のPOINT】

グレイナーの5段階企業成長モデルとは

「5段階企業成長モデル」とは、ラリー・E・グレイナーが1979年にハーバードビジネスレビューに発表した論文『企業成長の”フシ”をどう乗り切るか』に記載されている企業の発展の典型的なモデルを表したものです。

企業が事業規模を拡大していく中で成長するための条件と、成長していく中で生じる乗り越えなくてはならない組織課題(危機)について下図で表現しています。

「グレイナーの企業成長モデル」を簡単に説明すると、

・ 企業は5つの顕著な発展段階を経て成長する
・ 組織は危機を乗り切るために、一定の変革と革命を行わなければならない
・ 危機を乗り越えて新たな成長段階へと進む

というものです。

そして、

・ 発展段階には成長するためのモデルがある
・ 同時に、危機も発生する
・ その危機を乗り越えるモデルがある

としています。

5段階の成長モデルと危機とは、

第1段階:創造性による成長とリーダーシップの危機
第2段階:指揮による成長と自主性の危機
第3段階:委譲による成長とコントロールの危機
第4段階:調整による成長と形式主義の危機
第5段階:協働による成長と新たな危機

となります。

このモデルに基づき最適な戦略を描くことで、
「組織ライフサイクル」において直面する問題に対して十分な準備ができ、
典型的な”落とし穴”を避けて通る事さえできます。

御社は現在のどの段階に該当していますか?

下記でそれぞれの段階を見ていきます。

【第1段階】 創造性による成長

企業の創業当初の段階です。
この時期は起業した経営者が全てのビジネススキームを考え、マーケティングを行い、投資の意思決定を行います。
また、部下は経営者の思いに集った最適なメンバーが組織全体で補完しあいながら事業を進めていくことになります。
この時点で経営者(リーダー)に強いカリスマ性や卓越した技術や発想力があると、従う社員も強い社員となり成長の下地ができます。
まさに「創造性による成長」です。
軌道にのった企業は徐々に事業が拡大し、投資も増え、内部組織も分業が必要になります。
新しい社員を採用していく過程で、創業期のメンバーとは思い入れもやや希薄な社員が入社してくるので経営者(リーダー)のカリスマ性だけでは企業の成長を維持できません。
そのため企業内にしっかりとした組織を構築する必要が出てきます。
これが「リーダーシップの危機(限界)」という最初の危機になります。

【第2段階】 指揮による成長

社内に組織がしっかりと作られると会社が機能的に動き出し、
製造、営業、経理など、分業されていきます。
経営者は全体を俯瞰し、最も効率よく経営資源をコントロールすることになります
これが「指揮による成長」です。

この時点で経営者は“リーダーシップ”と同時に“マネジメント能力”が問われます
(この段階になるとリーダーシップや特殊技能だけでは乗り切れなくなってくるということですね。)

経営者は、それぞれの長に的確に指揮を与えていかなければならないのですが、
全体をコントロールことも徐々に難しくなってきます。
これが「指揮の危機(限界)」です。

この段階で最も怖いのは強い組織の長が、自部門の最適のためだけにバラバラに活動をし始めてしまうことです。
営業が売上を上げるために原価を考えず安売りに走ったり、
開発が興味本位から売れる見込みのない製品に多大な投資をしたりすることです。
これを防止するためにも経営者(リーダー)は経営理念やビジョンをしっかりと企業内に浸透させておくことが重要な時期です。

【第3段階】 委譲による成長

組織・部署の数が多岐にわたってくると経営者の指揮だけではスピード的にも業務の進め方的にも制御できなくなるほど複雑になります。
そこで経営者は任せられる組織の長に権限を委譲し、それぞれの組織が独立するような事業経営が求められます
これが「委譲による成長」です。

この規模になると社員もいろいろなタイプの人が採用され、優秀な社員もあれば、その逆の社員も出てきます。
そこで経営者は権限を委譲する代わりに成果主義を展開します。
中間層の育成~成長も重要なポイントになります。

権限を委譲されたそれぞれの組織がしっかりと収益を出し、独立採算の組織運営を求められるようになると、優秀な人の取合いや、その部署だけの利益を優先した部分最適の投資などを行い、全社的には極めて非効率なことが行われます

これが「コントロールの危機(限界)」になります。

【第4段階】 調整による成長

それぞれが別々の会社のように事業を展開すると、前項の通り非効率なことがさまざま発生します。
そこで横断的な組織が各事業部にまたがるように関わることで全体調整(全体最適)を試みます。
これが「調整による成長」であり、部門間のセクショナリズムを解消する必要性が生まれてきます。

管理部門をホールディング会社にしたり、マーケティングチームを横断的にして全体最適や技術的なシナジーを生み出す組織モデルです。

この段階での問題は組織が官僚化するという問題です。
既に社員レベルでは事業部の理念や収益は関係なく、分業化された自己の目標達成だけが働く目的になります。
これをグレイナーは「形式主義の危機」と呼んでいます。

【第5段階】 協働による成長

第5段階になると「次は何を頑張ろうか」という具合に心理的飽和状態となり、優秀な人材が辞めてしまうなど、新たな問題が起こりやすくなるとグレイナーは述べています。
この段階では、組織内でお互いの自主性を発揮し「協働による成長」を図る必要が出てきます。
既存のビジネスモデルの安定化を図りながらも、イノベーションが起こりやすい組織体制を作り、「新しい危機」を乗り越える必要があります。

下表は、これまで見てきた5段階において、どこに「焦点」をあてて、どのような「組織体制」により、どのような「経営スタイル」が適合するかを一覧で示したものです。
それぞれの段階で直面する「課題」とそれに呼応する「重要な仕組み」を理解したうえで、最適な組織づくりが企業発展の鍵となります。

中小企業における強い組織づくり

中小企業における組織づくりにおいても、このモデルは大変参考になるかと思います。
特に第一段階から第四段階まではコンサルティングの現場でもよく見受けられます。

最初はカリスマ的なリーダーが引っ張り、
徐々に組織化し、
優秀な部下がそれぞれの組織管理者になり、
最後は独立採算部門になる

という形です。

企業の各段階に応じて生じる課題(評価制度や育成の仕方、モチベーションの高め方などの組織施策)を見極め、対応することが大切です。

その中でいろいろな危機を乗り越えていかなければならないのですが、重要なのは、組織を結びつけるビジョンを明確に置くことだと思います。

組織化、分業化が進んでいっても組織のミッション・ビジョン・バリューを明確にし、社内に浸透させることで、『コントロールの危機』や『形式主義の危機』などは乗り越えていけるはずです

経営コンサルタントとして、企業のライフサイクルに合った最適な支援ができるよう、当該モデルも参考にしながら活動していきたいと思います。

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