【難易度】★★★☆☆
融資審査で決算書が重要であることは周知の事実ですが、
決算書を様々な観点から分析する財務指標は数が多すぎてどれを重視すればいいのか悩んでいる社長は多いのではないでしょうか?
ここでは、融資審査で重視される財務指標である「自己資本比率」と「債務償還年数」について解説いたします。
自己資本比率とは
自己資本比率とは総資本に占める自己資本の割合を示す指標で、この比率が高ければ高いほど企業の安全性が高いと判断されます。
計算式は下記の通りです。
自己資本比率=自己資本(純資産)÷総資本(総資産)×100

一般的に自己資本比率が30%あれば理想的な企業といわれています。
逆に、マイナスの数値となる企業は「債務超過」となり、融資を行う金融機関の印象はよくないものとなってしまいます。
状況にもよりますが、プロパー融資の申し込みはかなり困難になると思われます。
債務超過になってしまった場合には、日本政策金融公庫の融資や信用保証付きの融資を何とか獲得できるよう、改善計画書の作成等の対策を講じる必要があります。
自己資本比率は過去の利益の積み上げを表すことから、毎年変動しがちな利益と異なり、年度ごとに大きく変化するものではなく、過去から現在までの会社実態を反映する重要な指標と言えます。
しかし、この自己資本比率だけを意識していると、本質を見失う恐れもあります。
それは、「銀行からの借り入れが増えると(現金=「資産」が増えると同時に借入金=「負債」が増加し)、自己資本比率が悪化するため借入したくない」との発想になるケースです。
当然、銀行は自己資本比率という表面上の数値が下がっても、会社実態には影響がないことを理解しているからお金を貸すわけです。
しかし、自己資本比率ばかり気にして経営する社長は「財務状況を悪化させたくない」と借入しないことを選択してしまい、将来に向けた投資を控え、細々とした経営となってしまいます。
そうした点から、次に説明する債務償還年数の方が、実務的には重要かもしれません。
債務償還年数とは
債務償還年数とは、企業が債務を全額返済できまるでに何年かかるかを示した指標で、返済能力を示す代表的な指標となります。
基本的な計算式は下記の通りとなります。
債務償還年数={借入金+運転資金(売掛金+在庫+買掛金)-現金}÷(利益+減価償却費)
※計算式は金融機関によって若干異なりますが、わかりやすい言葉で伝えると「”実質的な債務”を”実質的な利益”で割っている計算式」であり、「債務を利益で返済した場合、何年かかるのか」を示したものです。
貸したお金がしっかり返してもらえるかを重視する金融機関にとって、債務償還年数は最も重要視する指標の一つであり、この期間が短ければ短いほど良いことを示しています。
一般的に債務償還年数は10年以内にしておくことが理想的であるといわれています。
この指標から、利益と減価償却費からその企業がどれくらい借入ができるかを簡単に判断することができます。
例えば年間利益が500万円の会社で減価償却費がほとんどないのであれば、理想的な借入残高は(500万円×10年の)5000万円くらいとなり、その会社がすでに8000万円の借入をしていれば、これ以上の借入は難しいと判断される可能性もあります。
※金融機関との付き合い方や付き合ってきた年数等により総合的に判断されるため、一概には言えない点ご理解ください。
また、この指標であれば、自己資本比率と異なり、銀行からの借入金を増やしたところで影響はありません(借入が増えても同時に増える現金を差し引いて計算する)ので、会社の健全性を把握するには適しているかもしれません。

経営指標で分析する際の重要な視点
それ以外にも流動比率や棚卸資産の回転率、売掛債権の回転率等、重要な財務指標は数多くありますが、あまり細かい指標を追求しすぎても本質を掴みづらくなることが往々にしてあります。
全ての経営指標において重要になることは、
ことに集約されますので、様々な経営指標を使って分析する際は、上記ポイントの数字を大局的に捉えることが最も重要と言えます。