【難易度】★★★☆☆
【イノベーションの本質を一言で表すと】
“既存の知”と“既存の知”の「新結合」
イノベーションの誤訳
「イノベーション」という言葉を聞くと、
多くの方が「新技術」「技術革新」「新発明」などを連想されないでしょうか?
日本では、「イノベーション」を上記のように「技術革新」などと訳すことが多いのですが、
そのきっかけは日本の高度経済成長が始まった1958年の経済白書に記載されたことで、この言葉が拡がってしまったと言われています。
しかしこれはイノベーションの概念を正確に反映した訳ではありません。

イノベーションの定義
「イノベーション」という言葉は、
経済学者のシュンペーターが、
著書『経済発展の理論(Theorie der Wirtschaftlichen Entwicklung)』で
概念や重要性を説きました。
イノベーションの源流となったシュンペーターは、「イノベーションとは既存知と既存知の新結合である」と述べてており、「イノベーション」を5つに分けて定義しています。
(1)創造的活動による新製品開発(プロダクト・イノベーション)
(2)新生産方法の導入(プロセス・イノベーション)
(3)新マーケットの開拓(マーケット・イノベーション)
(4)新たな資源(の供給源)の獲得(サプライチェーン・イノベーション)
(5)組織の改革(組織イノベーション)

イノベーションは「新しい画期的な発明」、「0から生み出すもの」といったイメージも多いのですが、本質は既にあるものを組み合わせて新しいものを生み出すことなんですね。
シュンペーターの定義からも「技術革新」=「イノベーション」とするのは、
イノベーションをごく限られた範囲で捉えてしまうことになることが分かります。
イノベーションの本質を考えると、(1)でいう新製品開発だけではなく、
(2)~(5)について考えていくことが新しい価値を創造するうえでは重要なことだといえます。
イノベーションが「技術革新」と捉えてはならない理由
企業が新しい領域へ挑戦する際に最も大切なことは
「顧客にとって価値があるものやサービスを提供すること」です。
顧客にとって新しい価値を提供するためには、必ずしも新しい技術が必要なわけではありません。
自社の技術と、何かしら他のサービスを組み合わせて、
新しい価値が提供できればそれが「イノベーション」となります。
技術の枠に囚われてしまうと、スタートの段階から無意識に発想を限定してしまい新しい価値を生み出す可能性を大きく減らしてしまいます。
また、技術の視点だけで考えてしまえば、必然的に開発コストがかかります。
技術ではなく別のものと組み合わせることで、開発コストがゼロで価値ある製品やサービスを生み出せるかもしれない、という視点が重要だと言えます。
イノベーションの具体例
・iPhone
たとえば2007年に登場したiPhoneです。
私は当時Apple製品マニアだったこともあり、発売当日に半休をとって入手した思い出があります。
”携帯電話”の域を超えて”ミニパソコン”のような機能を備えていることに衝撃を受けました。

しかし、よく考えてみればiPhoneは技術面では革新的なことはそれほどなく、
①携帯電話
②タッチパネルのiPod
③インターネット端末
という「既存技術の組合せ」です。
このiPhoneの登場によりコンパクトデジタルカメラ、電卓、地図、時計などが世の中から減っていき、変わりに様々な新しいサービスが生み出されていきました。
世の中を大きく変えたイノベーションの代表的な例です。
「iPhoneって画期的な新しさはないし、イノベーションとは言わないのでは?」
という人は、「イノベーション=技術革新」という誤訳を頭から信じているわけです。
このような考え方になっていると、iPhoneのようなイノベーションはなかなか生まれづらくなると言えます。
・コンビニ
コンビニエンスストアは、24時間営業を特徴とした食品や日用雑貨を扱う小売り販売が基本のビジネスです。

当初は、スーパーマーケットの延長でしたが、コピー機が設置されるなど、小売り以外のサービスを展開していきます。
大きな転機となったのは、コンビニ内にATMが設置されたことです。
郵便局や銀行に行かなくても、振込や引き出しができるようになりました。
荷物の配送や受取、公共料金の支払いといった対応も行うようになり、今やコンビニは生活インフラの一部となりました。
また、おでんや肉まん、揚げ物類が温かいまま持ち帰れたり、本格的なコーヒーを安価で提供しており、専門店の脅威にもなっています。
このようにコンビニでは、「小売店」+「サービス」の結合を積極的に行っており、
それが新しい価値の創造につながっています。
上記のように、コンビにでは新しい技術が伴うようなことはほとんど行っていません。
しかも、銀行や喫茶店が行っている「よく知られている」サービスを組み合わせています。
驚くほど新しいことを行っているわけではないのですが、新しい価値の創造につながっていることが、注目すべきポイントとなります。
「自社の強み」×「遠くにあるものとの結合」
自社の強みや基本となるビジネスに、何かを新しいものを組み合わせたときに新しい価値を生み出すことができる可能性が高くなります。
新しい商品や事業、イノベーションを考えるうえで、技術だけではなく、サービスや物流、あるいは組織体制も含めると、新しい価値につながっていきます。
技術の追求よりも、常に社会全体を俯瞰して、「自社の強み」と異なる業界のアイデア、仕組、技術を「新しく組み合わせできないか?」を考える視点が重要といえますね。
【参考書籍】
イノベーションに関しては、クリステンセン氏の下記書籍がお勧めです。


