MBA取得時の修士論文①(はじめに~論文の全体像)

【難易度】★★★★★

【この記事では】
・私がMBA認定を受ける際に書いた修士論文①を掲載いたします。
・きっかけは、お客さまから「どのような研究をしてきたか」と大学院で執筆した修士論文について聞かれることが何度かあったこと
・また、膨大な時間と労力を費やして書いた内容でもありますので、“興味のある方”に見ていただければと思い掲載いたします。

学術的な論文であるため、読み物としては堅苦しく、読みづらい点があります(一部ブログ用に平易な文章に書き替えています)。

今回は論文の冒頭部分にあたる「はじめに」~「論文の全体像」についての記載のみとなりますが、どのような研究をやったのかがわかる内容になっているかと思います。

繰り返しになりますが、“興味のある方向け”の内容となっていますので、あらかじめご容赦願います。

【この記事のPOINT】

論文テーマ「事業承継支援における中小企業診断士の役割と専門家間の連携に関する研究 −税理士との連携を中心として−」

第1章 序論

第1節 研究の動機・背景

日本の中小企業は戦後1950年代以降の高度経済成長過程において、日本経済を支える重要な役割を担ってきたが、現在、経営者が高齢化したことに伴い「事業承継」という大きな問題に直面している。
日本企業数は約382.0万者(総務省統計局, 2016)あり、そのうち中小企業・小規模事業者が380.9万者と全体の99.7%を占めている。

中小企業は、経営と所有が分離していないケースが多く、経営の安定化のためには自社株の大多数を経営者が所有することが欠かせないこと、また、経営面においても経営者個人の力量に依存しがちであり、属人的要素が強い点も特徴の一つである。

「企業」は永続的発展を目的としたゴーイングコンサーンを前提としている一方、「経営者個人」には寿命があることから、次世代への事業承継はすべての企業に関わるものであり、その際に発生する自社株や事業用資産の移転、後継者育成等の事業承継問題は避けることができないものである。

高度経済成長やバブル経済期を経験し、今日の日本経済を作り上げてきた団塊の世代(厚生労働省の定義では1947~1949年生まれ)に該当する経営者は2020年9月時点で2791万人にものぼり、該当する経営者の年齢は、社長勇退時平均年齢(小規模事業者70.5歳、中規模事業者67.7歳)に達していることから、中小企業経営者は事業承継の取り組みを先延ばしできない最優先の経営課題となっている(野村総合研究所, 2012)。

また、近年、事業承継形態の多様化が進んでおり、親族内承継の割合が減少している一方、社内の役員・従業員や社外の第三者に引き継ぐ親族外承継が大きく増加している傾向がある(みずほ総合研究所, 2015, p.8)。

そもそも、事業承継は単なる経営者の交代だけを意味するものではなく、自社株や事業用資産等の「資産の承継」による納税問題、また、後継者選定・育成等の「人の承継」、経営理念、従業員の技術・ノウハウ、取引先との人脈等の「知的資産の承継」があり、複雑度の高い経営課題である。

さらに、経営者親族間における個人の「相続問題」や、関係者間の利害調整が絡むことから、早期の段階から専門家と連携しながら、対策、準備を講じることが重要である(中小企業庁, 2019b, p.8)。

著者は中小企業市場に特化した事業承継コンサルタントとして活動しており、円滑な事業承継が企業の持続的発展において不可欠であることを痛感していると同時に、支援過程において「事業承継に取り組む企業側」と「事業承継を支援する専門家側」の利害関係の違いから大きなギャップを認識するようになってきた。
企業経営者にとって、事業承継は一生に一回あるかないかの不慣れな経営課題であるため、相談した専門家の方針に大きく左右される傾向がある。

また、事業承継対策に取り組むきっかけは、経営者の高齢化に伴い勇退時期が間近になったため、必要に迫られることが多く、目先の税金対策、いわゆる資産承継中心となる傾向が多い。計画的に取り組む必要性の高い後継者育成等の経営承継対策は後回しになり、対策が不十分のままになっているケースが目立っている。

一方、支援する専門家側については、事業承継手法の多様化(M&Aやファンド活用等)により、多くの業界から事業承継市場へ参入している状況であるが、限定された専門分野内で解決を図ろうとする傾向(自社ビジネスにつながる対策中心)や、先代経営者利益を過度に優先する等、承継後の企業パフォーマンスという観点から、最善とは言い難い対策も見受けられる。

本来、事業承継実務は、民法、会社法、相続税法、株式の評価など幅広い知識と実務を通じた豊富な経験を必要とし、幅広い視点から、事業承継を通じてさらなる企業発展に繋げる対策が講じられるべきであるが、「事業承継=相続」という先入観から、自社株や事業用資産の移転に伴う納税問題に焦点があてられ、資産承継や税金対策に偏重した支援になるケースも多く見受けられる。事業承継計画に基づく会社の再構築、後継者育成、従業員のノウハウ習得等の「人的承継」対策には多くの課題が残されており、支援余地の大きさを感じている。

事業承継をする際に最も重要なことは、「現在の経営者と後継者のそれぞれの想い、考え、ビジョンを共有し、会社にとって最良の事業承継、将来の理想像を専門家の適切な支援を受けながら一緒に考え、実行していくこと」であると考えている。

今後の課題として、事業承継を行う企業に対して最善の対策を支援できるような専門家間連携が重要であると考えている。その中でも中小企業診断士が企業の持続的発展に向けた事業承継支援を行うにあたり、「人的承継対策の充実」、「支援する専門家間の連携」を中心に最善の支援手法を研究していきたく、本稿テーマを設定した。

第2節 研究の目的

本研究は、中小企業が事業承継を行う際に、将来の発展に繋がる「事業承継の理想像」を明らかにするとともに、事業承継を支援する側である中小企業診断士とその他専門家との連携を通じて、最も効果的な「事業承継支援の理想像」を追求することを目的とする。

これまでの先行研究においては、事業承継に取り組む企業側の視点で調査されているものが大半であり、支援する専門家側で取り上げたものはあっても、公的支援機関や税務対策に関するものが大半であり、中小企業診断士を起点とした専門家間の連携に関する研究はほとんどなかった。そのため、本件研究においては中小企業診断士として支援専門家と連携し、最適な事業承継支援をする観点で調査を実施する。

対象とする中小企業は、近年、事業承継形態として減少している「同族企業」かつ「小規模法人」とし、中小企業診断士として強みを発揮できる支援である「経営承継(人的承継、知的資産承継)」を中心に考察を深めていく。

連携する専門家の調査については、事業承継支援に携わる専門家が多岐に渡るため、中小企業の事業承継支援機会が最も多い「税理士」(みずほ情報総研, 2018, p.24)と「中小企業診断士」を対象としたインタビュー形式により実施し、最善の支援方法について研究することとする。

【図表 1 -1 研究テーマ】

出所:著者作成

第3節 論文構成の全体像

第2章では、先行研究を通じて、中小企業の立場から事業承継の現状と課題を分析し、事業承継を行う同族企業にとって「事業承継の理想像」の考察を行った。

続く第3章では、事業承継を支援する専門家の先行研究レビューを行い、中小企業診断士とその他専門家の支援状況についての課題を整理し、「事業承継支援の理想像」についての検討を行った。

第4章においては、前章までの現状分析と課題に対して筆者の考えをまとめ、事業承継に取り組む中小企業にとって最善の支援を実現するために支援専門家は何をすべきかについて仮説を提示した。

続く第5章では、リサーチ・クエスチョン及び、リサーチ・クエスチョンに対する仮説を設定し、仮説検証のために事業承継支援を中心に活動している中小企業診断士と税理士に対してインタビューを実施した。

最後の第6章において、実施したインタビューをもとに仮説検証を行い、中小企業診断士とその他支援専門家との最適な事業承継支援方法についてまとめを行った。
 下記図表は本研究の全体像を図式化したものである。

【図表 1- 2 論文の全体像】

出所:著者作成

以上、第1章

・・・といった研究を行いました。

第2章以降については、また別の機会とさせていただきます。

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