【難易度】★★★★★
私は昔から建築物に魅力を感じてきました。
特に中世ヨーロッパの芸術的な建造物の圧倒的な迫力、精緻な作りに、無条件に引き込まれてしまうんですよね。

今回は、そのような建築に関する知識を背景にブランディングデザイナーとして活動している西澤明洋氏のインタビュー記事(アーキテクチャ思考=建築的思考)が大変興味深いものでしたので紹介いたします。
※News Picks掲載
西澤氏は株式会社エイトブランディングの代表。
主な著書は「ブランディングデザインの教科書」「アイデアを実現させる建築思考術」であり、大学時代は建築を学んでいた方です。
直前の記事でも取り上げています。

2つのデザインを「横断」する
・「かっこいい」「美しい」といったモノやビジュアルを指す「狭義のデザイン」
・思考や背景構造、プロセスといった抽象的なものが対象の「広義のデザイン」
※詳細は前の記事を参照ください
この狭義と広義のデザイン、両方持つ思考様式を「アーキテクチャ思考(建築家的思考)」と定義しています。
建築分野のデザイナーは、狭義と広義のデザインを行き来して、思考する習慣が身についているとのこと。
”問題整理をして、コンセプトを決める”という抽象的なデザインだけでなく、
造形物という”具体的なデザイン”までを「一気通貫」でやること
また、”企画立案”に特化するのでなく、企画が「絵に描いた餅」にならないためにも”プロジェクト全体に責任を持つ”こと
これは、西澤氏が挙げる建築分野の特徴であり、この思考が「アーキテクチャ思考」だと言っています。
見えないコンセプトから、見えるデザインまで、の一連の思考ですね。
そして、「建築」と「経営」の共通点として、
「何でも自由ではなく」、与えられた制約・条件がある
を挙げており、
その制約・条件の中で関係者全員が納得できるコンセプトに落とし込み、
カタチにしていくことが ”組織のブランディング” に通じると述べています。



『経営』で考えれば、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などが代表的な制約・条件となりますが、その制約・条件がある中で検討することはわかります。
ですが、その制約・条件を ”疑ってみる” という発想は私の中ではなかったですね!
ちなみに・・・【前記事のおさらい】

前の記事でも述べていますが、ブランディングデザインを考えるうえでは、
三角形で表した図のように、
上部「Mマネジメント:経営戦略」にあたる部分が広義のデザイン、
下部「C:コミュニケーション」にあたる部分が協議のデザインという位置づけです。
上部がブレると、下部はより大きくブレることになり、上部に該当する「経営戦略」はブランド構築において、とても重要であることを意味しています。
建築的思考の「5つの力」
西澤氏は(建築出身の人が持つ)デザインには次の5つの力があると考えています。

・建築の世界では、(図の左側にある)造形力と構造化力はセット、
・(図の右側にある)プレゼンテーション力と仮説構築力もセットで考える
なぜなら、建築物には風圧や地震などへの耐性が必要であると同時に、予算の制約がある
だから、「自由に粘土をこねて、何でも作っていい」とはならない
そこで、造形する前に、制約の中で物事の「骨格」である構造を作る必要がある
とのこと。
まとめると、広義のデザインで本質的な問題を考えてから、狭義のデザインに入るという順序立てになるということですね。
私は、「広義=抽象」、「狭義=具体」として捉えると腹落ちできました。
西澤氏はインタビューで、
実は、建築家は「モノ」を作りません。
アウトプットは建築物ではなく、「図面」です。
作るにしても、模型などを作るくらいです。
基本的には図面によって、大工さんに「このように作ってほしい」と、手順や構造を伝えるのが建築家の役割です。
だから、(斬新だが、実現は難しい)アイデアにとどまらず、アイデアを実装するための「プランニング(計画)」を作るともいえます。
と述べています。
また、プランニング(計画)するコツは経営にも生かせると述べています。
社長の頭の中ではすでに戦略は描かれているものの、言語化されていません。
そこでワークショップで、社長と各部門の現場にいる人同士で、考えを共有します。
そのためにも全員がフラットに案(アイデア)を出し合います。
そして、アイデアの出し方について下記の通り述べており、大変参考になりました。
僕らから最初の段階で「A案、B案、C案、どれがいいか」のような、「提案と選択」をすべきではないと思っています。
そのやり方だと、参加者全員が当事者意識を持てません。
しかも、本来、アイデアは拡散させてから収束させるべきであり、最初から選択肢がある状態だと、アイデア範囲が狭いまま収束させることになります。
だから、ワークショップでは、まずはあえてアイデアを拡散させることがあります。
僕らが出す案は、時として「尖(とが)り過ぎている」と言われます。
でも、差異化するには「業界の通例に反する」くらいのことが求められます。
例えば、四角い商品をリニューアルする際、社内からいろんなユニークな形が出てきます。
ただし、あくまでも四角という形状の範囲内。
そこで、僕らがあえて丸とか三角のようなデザインを見せます。

その丸とか三角がそのまま採用されることはないものの、いったんそのくらいアイデアの範囲を拡張させます。
その後、「こうしたらもっと現実的になる」という案を受け入れていく。
最後は、出た案同士が溶け合って「もはや誰の案だかわからない」感覚になることもあります。
「尖ったアイデア」を出すための発想法
上記の通り、「尖ったアイデア」を出すことで、アイデアを拡張させることがプロセスにおいて重要です。
「尖ったアイデア」を出すための発想法として、下記の手法が述べられています。
企業経営では、その会社が置かれている経営環境や過去の歴史がありますよね。
一般には、こうしたものは前提条件と、そのまま受け入れてしまうケースがあるかもしれません。
ですが、僕らは訓練を受けているので、「前提条件ではなく与条件」としてみます。
※「与条件」=「制約・条件」という意味合いで使用されています。
そして、与条件を疑うことから始めます。
例えば、
与条件として6個のブロックがあらかじめ与えられているとします。
そのクライアントの業界では、ピラミッド型のビジネスフレームを組むのが当たり前の商習慣だとします。

僕らはその与条件を疑うことで、同じ6個のブロックであっても、縦に積んでビルのように組むことができるかもしれないと考える。
あるいは(追加要素である)「未条件」を加えることで、人型のように組むことができるかもしれないと考える。
このように前提条件と思われていたことを少しいじるだけで、後々に大きな一手になりえます。
例えば、ECという手段(未条件)を加える(※)だけでも、作っている製品は同じであっても、商流が大きく変わることがあります。※ECを新たに加えて考え直す、という意味合い
そうすれば、求められるロゴもウェブもデザインが大きく変わります。
私の感想
建築分野でいうところの「造形を考える前に構造を考える」という考えは、
私の解釈では、「具体的な最終成果物を考える前に、抽象的な土台を固める」と捉えており、
普段の仕事も同じこととが言えると思います。
建築で例えれば、
”今ある構造のまま”、建物のある部分を後付けで出っ張らしたり装飾品を付け加えたりするのは、あまり良いデザインではなく、
”構造段階” で出っ張らせる方がエレガントに見せられます。
そして、「制約・条件を疑ってみる」「尖ったアイデアを意識して出す」という点は、私にとって新たに得られた視点でした。
建物は見た目のデザインばかりが注目されやすいのですが、
(”構想段階”である”抽象的な部分”にあたる)
中身の機能も含めたコンセプト作りや、
地域住民との融合であったり、
コストであったり、
様々な切り口で整合されていないと成立しません。
今回の西澤氏のインタビューを通じて、建物をデザインすることと経営をデザインすることに多くの類似性があると気付かされました。
私も社長のお力になれるよう、”具体”⇔”抽象”の行き来を意識し、”構想”→”構造”→”造形”へと「経営をデザインしていけるよう」に日々精進してまいります。

