【難易度】★★☆☆☆
本日のIT mediaオンラインニュースに『部下に嫌われる「自慢話」、代わりに聞きます』というシュールな記事がありましたので、紹介いたします。
社長が抱える負担と自慢話
先日、ある社長を訪問したところ
「昨晩、社内の飲み会で自分のことを長々と語ってしまい、二次会に誘う前にみんなに逃げられた・・・」
と反省(!?)されている様子でした。
普段、社長が抱える負担・苦労・プレッシャーは計り知れないですよね。
自身の苦労話や功績などを話すことで、従業員に社長の経験や考えを共有することにも繋がります。
しかし残念ながら、従業員の方々から見れば「自慢話」と受け止められることもあるようです・・・悲しいですね。
でも、頑張ってきたことを誰かに聞いてほしいと思うのは、自然な感情です。
そんな思いを受け止めようと、森永乳業がユニークなオンラインサービスを始めました。
森永乳業のユニークな無料Webサービス
森永乳業が開発したのは「武勇伝聞いてくれる会議」という無料のWebサービス。
コロナ禍で定着したオンラインミーティングを模したもので、聞き役として用意された8人の中から、自慢話を聞いてもらいたい3人を選び、会議に入室。
自慢話や武勇伝を語り始めると、聞き役の3人は嫌な顔をせずうなずいたり、相槌を打ったり、話し手の気分が良くなるようにリアクションを取ってくれる、という何とも面白いサービスです。
名前もすごいのですが、キャラクター設定も面白いですね(笑)
実はこのサービス、聞き役の方の映像は事前に録画されたもので、実際に話を聞いているわけではないとのこと。
そのため、24時間365日、好きなタイミングで参加できるようです。
(うなずきや相槌のズレが気になりそうですが、どんな感じなんでしょうか??)
録画された聞き役に向かって自慢話を語るという、何ともシュールな状況ですが、この新サービスのアイデアが面白く、開発背景がとても気になりました。
「食」と「体験」の掛け合わせ
サービス開発を担った森永乳業の担当者によると、
「新たに開発したおつまみの新商品を知ってもらうためのサービスではありますが、ただ食べてもらうのではなく、『食』と『体験』の掛け合わせで、より気持ちが上がるような時間を提供したいと考えました」
とのこと。
このオンラインサービスは、森永乳業が4月1日に発売したおつまみ商品「クラフト 魚Chee(ウオチー)」シリーズを知ってもらうために開発されたコンテンツということです。
森永乳業は2020年9月からウオチーシリーズの開発をスタートするのに合わせ、顧客調査としてビール好きの40~50代約20人を対象に、オンライン会議でグループインタビューを実施。
グループインタビューは、参加者約20人が自宅でビールを飲みながら話を聞くというカジュアルなスタイルで行い、この中で挙がったのが「話し相手がいなくて寂しい」「自分の話を聞いてほしい」という声だったといいます。
「こうした声を受けて、新商品のおつまみを食べてもらいながら、より楽しんでもらえるような空間を作りたいと考えました」(担当者)
こうして構想されたのが「武勇伝聞いてくれる会議」。
聞き役のメンバーはいずれも演技経験者で、オーディションを実施したようです。
すごいですね・・・。
書類選考や、自身のリアクションを動画に撮って提出してもらい、約50人の応募者から8人を選出、演技指導も細かな部分までチェックしたとのこと。
「前のめりあさこ」「スーパーリアクション田中」など、8人のネーミングもとてもユニークです。
「実際のオンライン会議でも、相手の表情が見えなかったり、反応がなかったりすることがあると思います。その意味では、このサービスは大きなリアクションをしてくれるので、人と人の触れ合いというところで楽しんでもらえるのかなと思います」(担当者)
「頑張ってきたことを人に聞いてもらいたいというのは、自然な感情。
昨今はこうした武勇伝や自慢話が嫌悪感を持たれるようなムードがある中で、このサービスを通じて皆さんにハッピーな気持ちになってもらい、ソーシャルグッドにつながるといいなと思っています」(担当者)
顧客起点の発想
今回の面白いサービスは、「商品」を提供する企業が、提供する商品を食べたくなるような「環境や体験」を提供することであり、新たな取り組みとして大変興味深いですよね。
これは、お客さまを起点としたマーケットインの発想であり、“自社の商品をいかに売るか“、という企業視点発想と真逆で、まさにマーケティングの基本を実践しているものと言えます。
そして、「モノ」の提供にとどまらず、モノを欲したくなる「サービス」の提供。
頭ではわかっていても、なかなか実行に移せないことだと思います。
特に今回のユニークな企画は(笑)。
今回のサービスは「事前録画の映像」を利用していますが、今後、AIの活用でよりリアルなサービスが提供できれば、顧客ニーズを満たす質は驚くほど高まっていくと思います。
人間の心理、感情は移り変わりが激しく、だからこそ、マーケティングも奥深いテーマではありますが、「お客さまを起点に考える視点」は常に必要だな〜と再確認した記事でした。