接客せずに顧客の心をつかむ時代

【難易度】★★★☆☆

【この記事では】
・あらかじめ“顧客が接客を求めない”と意思表示をする仕組みが増えている
・接客不要となることで、サービス提供側の手間が軽減されると同時に、顧客満足度も高まる
・顧客の繊細な気持ちに配慮し、顧客がサービスを選択できるようにすることが今後の新潮流

ということについて記載しています。

本日の日経新聞に

「シャイな客のハートをつかむ接客がじわりと広がっている」

という記事が掲載されていました。

接客を苦手とする人は以前からいますが、新型コロナで人と接する機会が減ったことなどを背景に、対人コミュニケーション能力に自信が持てない人が増えたとのこと。

新型コロナをきっかけに距離感が難しくなった時代、という点は私も感じていることです。

新聞記事を読んで、「繊細な気持ちに寄り添い、サービスを選べるようにすること」
が新潮流になるかもしれないと感じました。

【この記事のPOINT】

美容室予約の時点で「雑談不要」との意思表示

最初に男性専門美容室チェーン「パーカット」の取組みが紹介されていました。
特徴は、シャイな来店客(or あまり話したくない来店客)の気持ちに徹底的に配慮したサービス。

お客さまの

「店員さんの側も話しかけるよう教育されているのだと思うが、
ファッションや髪形にあまりこだわりがなく、
いろいろと質問してもらっても答えられない」

という声を踏まえ、同社のアプリには「接客不要ボタン」があり、美容師と雑談したくない場合、予約の時点で意思表示できるとのこと。

施術内容はアプリで美容師と共有でき、「前回と同じ」などと書き込んでおけば次回の説明は最小で済むようにしているようです。

オーナーによると、

「男性と女性では、美容室に対する考え方が全然違う」

「女性にとってはきらびやかで楽しみな時間かもしれないが、大半の男性は早く帰りたい。どちらかというと歯医者に行くのに近い気持ちだ」

私はプロフィールにも書いてありますが、長年自分でカットをしており、美容室に行くことはありませんが、この気持ちはわかります。
(そもそもセルフカットするようになったきっかけは、「お金の節約」と「行くのが面倒」という点でした。)

接客不要ボタンを押す人は全体の1割弱ほどですが、コロナ禍で以前より利用者が増えたとのことです。

「(接客が苦手な人から)話したくないという意思表示があると美容師側も助かる」

とオーナー。

きめ細かなサービスと男性に特化したカット技術が評価され、創業から約10年で東京や大阪、名古屋などに10店舗を展開するまでに拡大しており、ニーズは実証済みです。

買い物時の「声かけ不要バッグ」

アパレル会社のアーバンリサーチ(大阪市)が2017年に考案した「声かけ不要バッグ」も改めて脚光を浴びているとのこと。

雑貨や食品も取りそろえられた店内ですが、店頭に置いた ”青い専用ショッピングバッグ”を手にした客には「挨拶以外は基本的にしない」というサービスです。

何か寂しい感じがしますが・・・何となくわかる感じです。

利用者は来店者の1割程度。

「買い物に来た方の意思やスタンスがわかるのは店員側としてもありがたい」

とお店側のお話。

新型コロナ禍では声かけ不要バッグの利用者層が変化し、20〜30歳代の女性に加え、50歳代などにも広がり、アンケートでもサービスにおおむねポジティブな反応が寄せられている、とのことです。

男性向けのスイーツ自販機

スイーツ通販サイトを運営するCake.jp(ケーキジェーピー、東京・新宿)は3月、ホワイトデーに向けてJR博多駅(福岡市)の商業施設内にスイーツ自販機を設置

「バレンタインデーのお返しを買うためにスイーツ店に並ぶのが恥ずかしい・・・」

という九州男児に応えるため、とのことです。

同社が22年に実施した調査によると、
ホワイトデーのギフトを購入する際に
「店舗に買いに行くことに恥ずかしさや抵抗がある」と答えた男性は14%、
「店舗で並ぶことに恥ずかしさや抵抗がある」は20%いたことを踏まえてのこと。

Cake.jpの自販機はこの層をターゲットに設定。
あえて女性が多いファッションフロアでなく、ラーメン店が集積する「博多めん街道」に置き、
“たまたま通りかかったとき”にスマートに購入できるようにしたようです

売れ行きは想定以上で、当初はホワイトデーが終われば撤去する予定だったが、好評を受けてサービスを継続することを決めたそうです。

人見知り歓喜の回転ずし

くら寿司では21年末までに全店に導入した「スマートくら寿司」が人見知りの消費者から好評とのこと。

アプリで予約し、店頭端末でどの席か把握し、注文も会計もスマートフォン。
一切、従業員と接しないで済む仕組み

もともとは従業員の負担を減らすために導入を進めていたようですが、SNSではコミュ障を自認する人々から

「完全セルフだからめちゃくちゃ1人で入りやすい」

「人見知り勢、大歓喜」

と喜びの声が寄せられているようです。

2割が「新型コロナでコミュ力衰えた」

新型コロナ禍で人との対話が苦手になった人は少なくありません。

コミュニケーション研修・コンサルティングを手掛けるグローコム(東京・港)が22年に実施した調査によると、コロナ禍で「コミュニケーション力が衰えた」という人は回答者の約2割に及んだとのこと。

特に10代では27.5%と自信の低下が顕著。
グローコムは「人間関係力の基礎が作られる幼少青年期に、リモート授業・リモートワークなどによってその力を鍛える機会が失われた」と分析しています。

対人関係に不安を感じる人向けに来店ハードルを下げる取り組みは重要性を増しているといえます

他人との距離感は人それぞれですが、シャイな人や店員と話しをするのが億劫な人でも気負わず使えるサービスは店と利用者、双方を助けるヒントになりそうですね。

常にお客さまの心理に寄り添って、最適な対応を追求する姿勢の大切さを感じました。

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