「ちょこざっぷ」に見る差別化戦略

【難易度】★★★☆☆

【この記事では】
RIZAPのコンビニジムである「ちょこざっぷ」が好調な理由(競合他社と差別化を図るユニークな戦略)を分析しています。

【この記事のPOINT】

「ちょこざっぷ会員数が日本一の80万人に」

RIZAP(ライザップ)グループは8月14日、2024年3月期第1四半期 (4〜6月)決算を発表しました。
決算内容は売上高は387億2500万円で、前年同期比2.6%増加したものの、2022年7月にサービスを開始した運動初心者向けジム「chocoZAP(ちょこざっぷ)」の会員基盤拡大に向けた先行投資を実施したため営業損失28億6400万円となった模様。

最近、近所にも出店されたり、友人が通っていたりと私自身、ちょこざっぷの動向は気になっていました。

今回この記事でご紹介しようと思ったのが、決算発表の翌日に

「ちょこざっぷ」会員数、日本一の80万人に

というニュースが発表されたためです。

下図はちょこざっぷとフィットネス他社会員数の推移を示したものです。
黄線のちょこざっぷの伸びの勢いが一目瞭然ですね。

出所:「Business Insider」2023.7.10記事より引用

また、このグラフの面白いところは、これだけ「ちょこざっぷ」が伸びているのに、他社が下がっていないこと
つまり、完全に違うマーケットということを意味しています
フィットネスって併用ニーズはほぼないと思うので、新規の潜在層を掘り起こしていることを示しており、大変興味深いですよね。

「ちょこざっぷ」の特徴

ライザップといえば、3カ月約30万円の高価格でトレーナーがユーザーに伴走し、「結果にコミットする」がウリの本格パーソナルトレーニングです。

一方、ちょこざっぷは

「着替えなくてOK」
「1日5分でもOK」
「初心者OK」

という無人ジムなうえ、価格は約100分の1の「月額2980円(税抜き)」と対照的なサービスになっています。

RIZAPグループ瀬戸社長のインタビューが「Business Insider 2023.7.10」の記事に載っていましたので紹介すると、

ジムでのトレーニングは、着替えを持って店舗に移動し、到着したら靴を履き替えて、せっかく来たからには1時間くらい頑張って、シャワーを浴びてまた着替えて帰る —— という、会費だけでなく、手間という意味でもコストがかかります。
運動自体が、正直まだ特別なものだと思うんです。
お客様のストレスを極限までなくし、気軽に簡単に楽しく、日常生活の一部として運動ができるようにハードルを下げていったことが大きい

平均滞在時間が約30分で、10分程度で帰る方も多いです。
一度の利用時間が短いことに加えて、アプリで全国の店舗の混み具合が分かるので、空いている店舗を利用いただいています。

とのこと。

“気軽さ” に焦点を当てて、利用者の運動に対するハードルを下げた点は、狙い通りの効果を生み出していると感じました。

また、News Picks(2023.8.16付)のコメント欄に
ホリエモンこと堀江貴文氏の見解が投稿されていました。

ガチ勢排除して幽霊会員になりがちなライト層をうまく取り込んでいる印象。
マシン中心のジムに加え、セルフ脱毛などの美容機器、1人カラオケやらシミュレーションゴルフやら、とにかく会費をとりあえず払っとくか、となるような設計をしてるところがすごい。
この規模を後追いはなかなか大変と思うので、私はうまく行くと思った。

ちょこざっぷはサービス開始当初から、施設にセルフエステやセルフ脱毛機器を置いたり、ゴルフ練習ブースを設けたりするなど、来館動機につながるサービスを提供しているようです。
コンビニジムを謳うように、こうした「トレーニングマシンに留まらない」サービスを今後も増やしていく考え、とのこと。

経営戦略についての考察

ちょこざっぷが展開している経営戦略において

[誰に]ターゲットの明確化

ターゲットとしているのは、スポーツジム利用者の中でも長続きしなかったライト層や、運動初心者層です。
上で紹介した瀬戸社長のインタビューでは、トレーニング上級者は対象外であると明確に示していました。
会員は女性が半数以上を占め、中でも20~40代が多いといいます。

サービスにはライザップで培った「継続させる」「人の行動を変える」ノウハウが盛り込まれているとのこと。
ライザップの実績データをもとに最適なトレーニングをレコメンドするほか、トレーニングの頻度が下がると、あの手この手で来館を促しているようです。
トレーナーが土下座して来館を請う動画(笑)、シンボルの「ちょこっとくん」が呼び掛ける動画など、複数種類を制作し、どれが最も来館動機につながったのかを分析しているといいます。

既存事業の強みを効果的に活用していますね。

[何を]フィットネス他社と異なるユニークなサービス

気軽に日常生活の一部に運動を取り込めるようなサービス、来館動機を高めるサービスが盛り込まれています。

ちょこざっぷはサービス開始当初から、気軽に運動できる環境を提供することに加え、
施設にセルフエステやセルフ脱毛機器を置いたり、
ゴルフ練習ブースを設けたりするなど、
来館動機につながるサービスも提供しています。
コンビニジムを謳うように、こうした「トレーニングマシンに留まらない」サービスを今後も増やしていく考えとのことです。

また、News Picksのコメント欄に下記のような記載がありました。

オフィスワークでも自宅ワークでも、今はそれなりに外で人と会い商談をする、会社に顔を出す等々増えていると思いますが、そのすき間時間に何をするか?を考えた時に、昼間であればカフェに一息つく、夕方の帰り道であれば一杯飲んで帰る代わりに、ちょこざっぷを使う人がいるのではないでしょうか?
月額3200円くらいであれば、スタバと一杯飲みを4回行く代わりに運動した!というのは、ある意味、とても有意義に感じるような気がします。
つまり、既存のジムが競合なのではなく、すき間時間潰しのサービスが競合であり、その中では目新しいので、グングン伸びている…と推測します。

もしかしたら、ちょこざっぷの潜在的競合は、駅近のスタバ、ドトールのようなカフェと、気軽に飲める立ち飲み屋とかになるかもしれませんね。

[どのように]他店舗展開で通いやすく

ちょこざっぷの店舗はコンビニや小規模フィットネスジムの跡地などに出店していて、面積はそれほど広くありません。
ちょこざっぷは当初の予定を上回るスピードで出店し、2026年までに店舗数を2000店に拡大することを掲げていますが、機動力高く出店できるのには理由があるようです。
(上記社長のインタビューより)

■出店条件の明確化
いくつかの出店ルールを設けることで、都度判断を仰ぐ手間をなくし、出店に至るまでのプロセスを簡素化している。
スピーディーに展開する分、出店ルールは退店時のリスクを考えた内容になっている。
期間の縛りがなくいつでも退店できる契約を結ぶ、原状回復を担う事業者はライザップが指定する企業とするなど、「出ていく時のコストを最小限に抑える」ことを重視する。

ライザップは「高い」というイメージが定着していたので、お値打ちなコースをつくったのは、実質賃金が低下して可処分所得が減少している昨今、この戦略は正しいと思います。

一方、新しい客層を開拓できたものの、どこまで顧客を維持できるのか注目されます。

個人的には気軽に運動を始めようとしたお客様を、客単価が高いライザップ会員へ導く等の戦略もありかと思います。

一気に顧客を増やしたことで、お試し層含めて申し込みが多い状況だと思いますが、どの程度の水準まで伸びていき、今後どのような戦略、対策を講じていくのか、注目していきたいと思います。

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