自由度の高い「会社法」と「種類株式」について

【難易度】★★★★★

【この記事では】
会社法制定の背景を踏まえ、事業承継対策等でも“裏ワザ”的に検討されることのある「種類株」について解説しています。
※ご質問が多いテーマであるため、かなり詳細まで踏み込んで記載しています。
 興味のない方は前半部分の「会社法の原理」部分までお読みいただけると幸いです。

私はこれまで「事業承継」を専門分野としてコンサルタント活動を行ってきました。
事業承継は法務、税務、会計、経営の分野が複雑に絡み合う幅広いものであるうえ、奥深い経営課題といえます。

その中で、「種類株式」についてご質問いただくケースが多く、今回は背景にある「会社法」制定の歴史を踏まえ、種類株の性質と導入方法について解説させていただきます。

【この記事のPOINT】

2006年の会社法制定

「会社法」は2006年に商法の一部が独立する形で新たに制定されました。
当時は小泉構造改革の嵐が吹き荒れ、明治以来続いてきた我が国の伝統的な法制度が、極めてアメリカ的なものに変革されました。

この改正によって

・資本金が1円でも会社を設立できるようになった
・役員が1人だけでも良くなった
・有限会社制度がなくなる

といった手続的な面が大々的に話題になりました。

私は当時社会人7年目で、新聞やニュースで話題になっていたこともあり、この改正をきっかけに会社法を勉強始めるきっかけになりました。

当時は手続き面での変更、といった程度でしかとらえていなかったのですが、今考えてみると根本的な部分も大きく変更されていたことを認識いたしました。

特に(後述する)会社法成立に伴い、「種類株」という大胆かつ画期的な制度が生まれました。

日本の旧来の法制度(旧商法)は、簡単に言うと「法律に書いてあること以外はすべて禁止」、
ただし「国家が許認可すれば例外的に認める」というのが基本原則でした。

例えば「株式会社の株主の権利は全員平等にしなければならない」といった規制が当たり前で、
それ以外のことを一切認めないということが国民を保護する制度であると考えられていたと言えます。

ところが会社法の発想は、「基本的にはすべて自由」、
ただし「特に法律で規制していることだけは許認可を要する」
そして「法律上で不明なことは裁判で決めれば良い」というもの変化
しました。

その意味から、「種類株」は、従前の株式に対する常識を完全に打ち破った制度になったといえます。

株式の常識を変えた「種類株式」

2006年まで株式会社を規制していた「旧商法」の規定では、基本的に株式会社における株式には「普通株式」というものしかなく、ごくごく例外的に(相当大規模な会社に限られ)「種類株式」という特殊な株式が認められていたに過ぎませんでした。

ところが、会社法はそもそも株式というものには様々な種類があるという前提のもとに構成されており、従来の株式も言い換えてみれば「普通株」という種類株式の一種であるという考え方に、180度変わったと言えます。
その結果、以前のように大企業だけではなく、ごく普通の中小企業でも種類株式を広く活用することが可能な法制度となりました。

会社の株式にはどのような権利があるかを分析すると、下記のようになるかと思います。

〜株式の権利〜
①【議決権】株主総会に出席して会社の方針に対する意見を述べる権利
②【配当請求権】会社から利益配当を受け取る権利
③【自由財産権】株式を当事者の意思の合致でもって自由に譲渡できる権利
④【残余財産分配請求権】会社が解散した際に残っている財産を受け取る権利
⑤【株主平等の原則】保有する株式数に正比例して全ての権限を行使できる権利

会社法の原理と種類株式の分類

旧商法と会社法とでは根本的な原理が異なると述べましたが、具体的には下表のような部分が大きな変化点となっています。

このように、従来は法律で決められたこと以外は何もしてはいけなかったものが、会社が自律的に定款で定めることによって、多くの事項が実現可能となり、これを「定款自治」と言います。

現在では、定款の冒頭に「経営理念」を入れる会社が増えていることもこうした考え方が浸透してきていることを表していると思います。

種類株式も定款によって決定されるものであるため、代表的な定款自治の例といえます

種類株式を簡単にいうと、「普通株式ではない株式」です。

前章で見た株式の権利である、株式の議決権、配当受領権、会社清算時の財産受領権のほか、その他の財産的権利の内容に変化が加えられた株式となります。

種類株式には下記の9種類が法定されています。

出所:https://circu.co.jp/pro-sharing/mag/article/2556/

多くの中小企業が課題に掲げている事業承継問題を解消するうえでも、種類株式の活用は有効策です。
もし株式が分散している状況で事業承継を行えば、後継者に議決権が集中させられないおそれがあります。
もともと株式会社では保有する議決権数により経営への影響力が決まるため、後継者の持ち株数が少ないと事業承継後の経営に支障が生ずる可能性が高くなります。

そうした問題を解決するには、後継者に議決権のある普通株式や拒否権付株式を承継させる一方で、経営に関係しない相続人に対しては無議決権株式を引き継いで議決権を後継者に集める対策が可能となります。

このような形式で種類株式(株にそれぞれ9つの色をつけられるイメージ)を活用すると、事業承継後の経営を円滑に進められるんですね。

種類株式の発行手続き

種類株式を発行するケースには、主に次の2つがあります。

(1)新たに種類株式を発行する場合
(2)既存の普通株式を種類株式に転換する場合

(1)新たに種類株式を発行する場合

新たに種類株式を発行する場合には、定款で種類株式の内容を定める必要があります。

したがって、株主総会の特別決議による定款変更の決議〜登記が必要となります。

既に他の種類の種類株式発行会社である場合には、既に発行している種類株式の種類株主総会の決議も必要になりますので、注意が必要です。新たに種類株式を設定することにより、既存の種類株式の株主に損害を及ぼすおそれが生じるためです。

(2)既存の普通株式を種類株式に転換する場合

普通株式のみを発行している会社が、発行済みの普通株式の一部を種類株式に転換する場合があります。
この場合、まずは種類株式の内容を定款に定めなければならないので、株主総会の特別決議による定款変更が必要となります。
その際に、種類株式の内容と発行可能種類株式総数を定めて、その旨の登記を行う必要があります。
〜ここまでは、新たに種類株式を発行する場合と同じです〜

次に、種類株式への変更を希望する株主全員と会社の合意が必要となります。
さらに、普通株式に留まる株主全員の同意を得る必要があります。

より具体的に理解いただくため、普通株式しか発行していない(定款にも種類株式発行できる旨がない)X株式会社において、A種類株式を発行し、さらに普通株式からA種類株式へ転換する場合を下記で考えてみたいと思います。

【株式会社Xの現状】
普通株式  株主甲 100株、株主乙 200株

【株式会社Xの要望】

1.A種類株式を発行できるようにする。
2.株主甲の所有する普通株式100株をA種類株式に転換する。

この場合には、次の手続きが必要になります。

・種類株式発行についての決議・A種類株式を設定するための定款変更にかかる株主総会(特別決議)
・甲の所有する株式をA種類株式に転換することについて、会社と株主甲との合意
・甲の所有する株式をA種類株式に転換することについて、株主乙の同意

種類株は効果的に活用することで、活用場面は多岐に渡りますが、
活用する際は、専門家と一緒に、将来を見据えて慎重な導入をお勧めいたします。

Please share!
  • URLをコピーしました!
【この記事のPOINT】