ユニクロの無料フリース戦略(Placeの重要性)

【難易度】★★★★☆

【この記事では】
・ユニクロの無料フリースイベントを通じて、新時代のマーケティングフレームワーク「エンゲージメント4P」を説明しています。
・これまでのマーケティングでは(4P)、プロダクト(Product)を起点として、競争力のある価格設定(Price)、よいコミュニケーション(Promotion)、小売店などの販売チャネルへの配荷(Place)という順番で検討するのが一般的でした。
・今の時代は「顧客との接点すべて」がPlaceであると捉え直し、そこを起点に4Pを再構築することが重要になっています。

【この記事のPOINT】

ユニクロの無料フリース戦略

ユニクロがフリースを無料で提供するというユニークな取り組みが話題になっています。

今年発売の「フリースTシャツ」を着用(試着)し、感想・意見を特設レジで伝えるだけで支払が完了するというものです。

ユニクロ原宿店(東京都渋谷区)で11月に実施したポップアップイベント「FLEECE CHAT STREET」のイベントの流れは次のようなもの。

①まず、店員から整理券をもらった後、指定された場所に並ぶ。
②店舗オープン後、店内にあるフリースTシャツを選び、試着室に持っていく。
③ フリースTシャツ着用後、マイクスタンドとやや大型のモニターのある特設スタンドに移動し、モニターに表示されたいくつかの質問に答える。
※利用客の感想が支払い代わりになる仕組みを「VOICE PAY」とネーミング
④ 回答後、その場で店舗スタッフが商品タグをハサミでとってくれ、これで支払いが完了となる。

質問は
「フリースTシャツの着心地を『擬音』であらわすと?」
→例:「フワフワ」

「フリースTシャツの着心地を『動物』に例えると? 3つお答えください」

「今年のフリース、何が違う?」

「フリースTシャツで思い浮かぶ単語を3個答えてください」

「フリースTシャツに『キャッチコピー』をつけるなら?」 
→例:「全米が泣いた」

などが次々と表示されるという流れ。

およそ1分もあれば全ての質問に回答できるくらいのボリュームのようです。

配布数量については、平日が1日100枚、土日祝日が1日200枚(期間中1人1枚)。

今回のような販促イベントを実施した背景として、
ユニクロがフリースを発売したのは1994年であり、2024年に30周年を迎えることから、幅広い層にフリースをアピールする狙いがあるとのこと。

最初からニュースやSNSで話題とることを見込んで、販促機会に繋げる意図が予測されます。うまい戦略ですね。

PR施策としては、逆に安上がりかもしれません。

エンゲージメント4P

今回のユニクロの取り組みから、最近私が読んだ本「マーケティングの新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント」(奥谷孝司、岩井琢磨著)を思い出しました。

この本のなかでは「エンゲージメント4P」という概念を提唱しており、
ジェローム・マッカーシーが提唱したマーケティング4P(Product・Price・Place・Promotion)をベースに、エンゲージメントの要素を加えてPlaceの意味を再定義した循環型マーケティング思考のフレームワークというものです。

特徴は、顧客とのつながりをエンゲージメントと捉え、これを実現するためのモデルとして考えるところ。特徴は、最も重視するのがPlaceということです。

以前の4P

マーケティングにおける4Pの考えは、プロダクト(Product)を起点として、よい商品を作り、競争力のある価格(Price)、よいコミュニケーション(Promotion)、小売店などの販売チャネルへの配荷(Place)を行うという順番で検討して行くのが一般的な4Pのモデルです。

デジタル化進展に伴い、Promotion(販売促進施策)、Place(顧客接点)をSNS等を活用して、いかに効果的にアプローチするか?、こういった流れが、近年まで重要視されてきました。

現在重視される4P

奥谷氏らの提唱する「エンゲージメント4P(E4P)」のフレームワークは、この流れをPlaceを起点として再構築したものです。

顧客はPlaceに存在するため、最も重要視しなければならないとのことです。

マーケティング4PではPlaceは「販路」とされてきましたが、エンゲージメント4Pでは店舗や棚ではなく、「顧客との接点すべて」がPlaceであると捉えます。
そして、顧客とのつながりを、顧客の視点から「その企業とつながる価値」と考えます。

これまでは、企業視点の囲い込みを目的としたつながりが優先されてきましたが、それでは顧客のことは何もわかりません。

本当の顧客価値とは、なぜお客様は自社とのつながりを維持してくれているのか? の理由の中にあります。

生活者が十分にモノを持っていない状態では、プロダクト起点のマーケティングでもよかったかもしれません。
しかしながらモノが溢れる現代では、顧客が何を求めているかをまず考えなくてはならないですよね。

また、デジタル化によって、顧客とつながる場所(Place)は店舗だけでなくオンラインにも存在するようになりました。

顧客接点を起点とし、データドリブンで顧客を理解すること、マーケティングとCRMが常に同期していることが、現代のマーケティングには重要であると奥谷氏は指摘しています。

今回のユニクロの例で見ても、お客様との接点を重視し、ニーズの把握によるお客様理解に努める活動はこの流れに沿っていますよね。

いかに顧客接点を持ち、その中で価値を作り、提供していくか、
今後はそのような流れでマーケティング施策を検討することの重要性を感じました。

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