未来をデザインする考え方【SEDAモデルとは?】

【難易度】★★★★☆

【この記事では】
抽象的な表現が多く、若干難しいと感じるかもしれませんが、今回ご紹介するSEDAモデルは企業が価値創出を考えるうえで大変参考になるフレームワークです。
※私が掲げている「~ともに未来をデザインします~」はこの考えをベースにしました。

【この記事のPOINT】

会社経営はアート(芸術)とサイエンス(科学)の融合

会社経営はアート(芸術)とサイエンス(科学)の融合であり、総合芸術作品などとも言われます。

サイエンス(左脳的思考)

サイエンスは左脳。
データや事実から合理的に意思決定をする論理的に解決策を導き出すアプローチ。
積み上げ型の分析的アプローチであり、再現可能性、数字を重要視。

アート(右脳的思考)

アートは右脳。
結論が先にきて、トップダウンの意思決定アプローチ。
感性、クリエイティブな発想、オリジナリティ、人の感情がべース。

SEDAモデルとは、4つの観点で、企業が創出すべき統合的価値を考えるための枠組み

上記の考えを延岡健太郎教授(一橋大学)はさらに発展させ、「SEDAモデル」を提唱しました。
SEDAモデルとは、企業が創出すべき統合的価値を考えるための枠組みです。
「現在はモノの価値ではなく、ユーザーの経験価値(ユーザーエクスペリエンス=UX)が鍵を握り、客観的に表示できる「機能的価値」ではなく、顧客が主観的に意味付ける「意味的価値」が重要である。顧客価値が暗黙化した。」と述べています。

「Science」「Engineering」「Design」「Art」のそれぞれの頭文字を取って、「SEDA(シーダ)モデル」と呼んでいて、意味的価値と機能的価値、問題提起と問題解決を軸にしたマトリックスで表されます。

【SEDAモデル】

出典:日本政策金融公庫調査月報2017年12月「顧客価値イノベーションによる価値づくり経営」(延岡 健太郎氏)をもとに作成

横軸は、「形式知」or「暗黙知」。
左側が「左脳」、右側が「右脳」のイメージ。

重点を置く顧客への提供価値の捉え方で分類されています。

縦軸は、「問題提起(上)」or「問題解決(下)」
顧客の想定を超えた問題提起なのか、顧客が求める具体的な問題解決か、という「価値の革新性」で分類されています。
問題提起は既存の価値を否定して、全く新しい価値を創出する「価値探索(上)」、問題解決は既存の価値を発展させる「価値深化(下)」、とも定義されます。

少しわかりづらいかと思いますので、私の解釈でかみ砕くと下記のイメージです。

【かみ砕いてお伝えすると】
例えば、アートは「芸術は爆発だ」と故岡本太郎氏の言葉のように、自分の中にある感性を周りから奇抜と思われようと表現することがありますが、デザインは自分よりも相手の立場で考え、ニーズに合わせて自分の感性を調整するイメージです。

左側も同じく、サイエンスは研究を突き詰める一方、エンジニアリングは社会にその技術を応用できるよう調整するイメージです。

あくまで私なりの解釈、例えですが・・・。

【Science】:サイエンス

機能的価値×問題提起の領域。
これまで世の中にないような新技術、新サービスを開発・提供することで価値を生み出す。
研究開発型ベンチャーなど。

【Engineering】:エンジニアリング

機能的価値×問題解決の領域。
既存技術、サービスの改良・向上などを通じた価値創出。
ほとんどの企業がこの領域を得意としている。

【Design】:デザイン

意味的価値×問題解決の領域。
デザインによる問題解決は、「デザイン思考」として最近流行している。
技術が進歩し情報の流通もスムーズになった現代では、機能的価値だけでは差別化が困難であり、後述のアートも含む意味的価値の比重が高まりつつある。

【Art】:アート

意味的価値×問題提起の領域。
デザインと違い何かのルールなり方法論があるわけでない、まったく新しい意味的価値の創出を指す。

「機能的価値」に加え、いかに「意味的価値」を付加していくかが重要

1990年代以前、意味的価値がさほど重要でなかった時代には、上図左側の機能的価値の中でエンジニアリング(開発)とサイエンス(基礎研究)をうまく統合することが成功のポイントでした。
技術的な格差が大きな世界では、製品・サービスは、「できること(実現可能なこと)」が価値の中心となっていました。
自動車、カメラやパソコンなどの工業製品などが典型例であり、開発競争の結果として優れた製品・サービスを産み出すことになったといえます。

1990年代以降は、上図右側の意味的価値が重要になり、双方を使いこなす必要性が高まってきました。

これからの世の中で求められる製品・サービスは、「形式知」よりも「暗黙知」、「問題解決」よりも「問題提起」がより重要になり、性能が優れていて使いやすいだけでなく、利用者の感性に訴える ”何か” が必要になってきます。

ここ最近の消費者マインドの変化に対して、依然としてモノづくり力のある日本企業は商品の技術的な「機能的価値」を重視していることから抜け出していないように感じます。
一方で、海外の収益性の高い企業の多くは、「機能的価値」に加え「意味的価値」を付加している傾向が顕著です。

出典:日本政策金融公庫調査月報2017年12月「顧客価値イノベーションによる価値づくり経営」(延岡 健太郎氏)をもとに作成

近年大きくヒットする製品は、機能性はもちろん、それ以外にも消費者の使いやすさや優れたデザイン、明確なコンセプトが打ち出され、機能的な価値と意味的な価値が融合されています。
便利さを選ぶ時代から自分らしさを選ぶ時代には、機能×意味の融合が必要になってきたということであり、日本企業はもっと意味的価値を提案できるようにしていく必要があるということですね。

4つの領域を組み合わせ、機能的価値+意味的価値を増加させていくことで顧客価値を創る

「Science」「Engineering」「Design」「Art」の領域を組み合わせ、機能的価値+意味的価値を増加させていくことで顧客価値を創ることが重要になります。

延岡教授はSEDAモデルについて、その読み解き方を次のように解説しています。

「意味的価値における問題提起として、右上にアートを位置付けます。デザインとアートの違いは、顧客の要望に合わせるのがデザインで、自らの哲学や信念を表現するのがアートです。」

「機能的価値について問題解決と問題提起が必要なのと同様、意味的価値についても両方が必要です。顧客が主観的に意味づける価値を商品・サービスに反映させるのがデザインであり、顧客に新しい意味を提案するのがアートなのです。」

私が考えるに、アートとは社長が抱いている熱い想いであり、その想いは社長自身の哲学を表現しており、顧客ニーズを超えた感動をもたらすものであるとします。アートな表現は顧客ニーズを超えるものであるため、それを顧客ニーズと適合するためのデザインが必要になります。

私はそのデザインこそ、経営コンサルタントが支援すべき部分だと考えています

これを経営コンサルタントのサービスに(若干無理がありますが)当てはめると、先生気質が強い人は「アート」徹底的に顧客課題の解決に徹するのが「デザイン」と位置付けられると考えられます。

私は、時代の変化に適合し、さらなる企業発展を図るためにも、社長のパートナーとして顧客ニーズに沿うような後者の支援、「ともに未来をデザインする」を実現できるよう精進していきたいと思います。

Please share!
  • URLをコピーしました!
【この記事のPOINT】