【難易度】★★★☆☆
競争地位による戦略の必要性
スポーツで、体力や技術力に大きく勝る相手に正面から戦っても勝てる確率は極めて低くなります。
格闘技等ではそのような差によって勝敗が偏ってしまうことを避けるために階級制度を取っている場合もありますが、そのような階級制度がない場合、体力・技術などで劣っている選手は、著しく不利になります。
しかし、相手と自分の強みや弱みを徹底的に分析して、相手の強みをできるだけ無力化し、さらに弱みに付け入って攻めることができれば、勝率を上げることも可能です。
逆に体力などに勝る方は、そのような戦術を防がなければ、思わぬ敗北を被ることになります。

スポーツに限らず、ビジネスにおいても、いかに「自らの勝率が高くなる方法で戦うか」が重要になります。
当然、弱者の立場にあるものだけではなく、強者の立場にあるもでも安易に競争を行っていると、いつの間にか自らの強みを無力化されてしまい、現在の有利なポジションを脅かされることになります。
ビジネス分野で、市場におけるさまざまな立場に適した戦い方=競争戦略を類型化し、それぞれが選択すべき戦略を示したのが、経営学者フィリップ・コトラーが1980年に提唱した「4つの競争地位戦略」です。
4つの競争地位戦略とは?
コトラーの「4つの競争地位戦略」とは、企業をその量的経営資源と質的経営資源、および市場シェアから4つのポジション=地位に分類し、それぞれに適した競争戦略を定めたものです。
具体的には、「リーダー」、「チャレンジャー」、「ニッチャー」、そして「フォロワー」の4種類です。

競争地位に応じた4つのポジションと戦略

リーダー
リーダーとは、市場シェアがトップの企業です。
価格変更、新製品の導入、販売促進などで市場をリードする立場にあり、マーケティング関連資源や生産資源などを、他の企業より多く保有しているなど、質・量ともに最大の経営資源を持つ企業のことです。
リーダー企業は、規模の経済が最も効率的に働く立場にあり、市場規模が拡大する時に最もその利益を享受することができます。
そのため、リーダー企業は、市場規模の拡大、最大市場シェアの維持・拡大・最大利潤や名声、No.1の地位の維持を目標として行動し、ターゲットとしては、「全方位・フルカバー」となります。
「周辺需要拡大」
商品を販売するとき、ターゲットの市場の周辺にいる新たな顧客を開拓すること
「同質化」
他企業が差別化戦略で挑んできたとき、同じ戦略を採用することで相手の差別化を無効化する戦略
「非価格対応」
価格以外のすべての分野で差別化を目指す戦略
「最適市場シェア」
シェアの拡大だけでなく、最大の投資収益率が得られるエリアや市場のシェアを確保・維持する戦略
コストダウン戦略をとってしまうと、他社も追随してくるため、市場全体の売上が落ちてしまいます。
リーダーはしっかりとした基盤があるため、ブランド戦略などで差別化を図り、市場の拡大を目指すのが王道。
チャレンジャー
チャレンジャーは、経営資源の量は相対的に大きいが、質的にリーダーには及ばない企業のことです。
市場シェアは一般的にリーダーに次ぐ規模を占めており、リーダーに挑戦し、市場シェアの拡大を狙う立場にいる企業です。
チャレンジャーは、「リーダーへの挑戦」が基本的戦略の一つであり、リーダーができないことをやる「差別化戦略」を取ることによって、長期的成長を図ろうとします。
差別化にしてもリーダーにすぐに模倣され同質化戦略をとられてしまうと意味がないので、リーダー企業のことを充分研究することが大事です。
フォロワー
フォロワーは、経営資源の質・量ともに相対的に劣る企業のことです。
現段階では市場シェアを狙えるような際立った独自性を持っておらず、リーダーやチャレンジャーの模倣をすることで、低コストでシェアを維持することを目指します。
リーダーに挑戦せず、チャレンジャーの取り残しを狙いながら、市場での地位を確立していきます。
戦略としては、上位企業に対しての「模倣戦略」や「低価格化戦略」となります。
ニッチャー
ニッチャーは、質的な経営資源には優れているが、量的には劣る企業のことです。
リーダーが狙わない隙間市場(ニッチ・マーケット)など特定市場においてミニ・リーダーとなり得る企業です。
戦略としては特定市場での「集中化戦略」です。
自動車業界では軽自動車で国内トップシェアであるスズキがこれに該当します。
中小企業がとるべき戦略
多くの中小企業は「フォロワー」、または「ニッチャー」の位置にいるのではないかと思います。
大半の市場においては、大手が9割程度締めているケースが多くあります。
限られた経営資源の中で生き残っていくために、競合の分析・調査をしっかりと行い、残り1割をいかに勝ち取るか、戦略を立てていくことが非常に重要です。
中小企業は量的資源において大企業に劣る分、
大手企業に魅力に映らない規模の独自市場で、
オンリーワンの存在になる集中戦略で、
価格勝負にならないニッチャー戦略を目指すことが重要になります(大手の苦手な匠技や非量産製品、ライバルに模倣されない差別化等)。
・中小企業はランチェスターの弱者の戦略に集中し、強者の戦略に巻き込まれることがないようにする。
・小さな隙間を発掘、開拓する努力
具体的な戦略は以下の3つが考えられます。
「関所戦略」
関所戦略=すきま産業。
生産工程では必要不可欠ですが、トップ企業が進出する価値を見いだせない小さい市場で独占を狙います。
「専門技術戦略」
専門技術によって先行しているため、ほかの企業が参入できないようにする戦略。
この戦略でニッチ市場を確立するためには、タイミングが重要となります。
新しい産業や、新しい習慣、新しい市場が生まれた瞬間からスタートしなければなりません。
「専門市場戦略」
専門技術戦略の市場版。
市場についての専門知識によってニッチ市場を確立します。
一方、ニッチャー戦略にあたり、以下のようなデメリットやリスクも考えられます。
- ニッチ市場は一度独占してしまうと成長が望めなくなる
- ニッチャー企業は、欲張ると大企業に目をつけられる可能性がある
- 模倣されやすい技術や差別化などでは、すぐに同質化戦略をとられ大企業に敗北してしまう
- 小規模な市場のため売上に上限がある
- 市場そのものがなくなってしまう可能性がある
ここであげている大企業の同質化戦略に対する対策として、特許などで市場を守ることが大事になります。
ニッチャー企業は、市場や世の中の動きをよく見て動向を予想する必要があり、
①市場を見極めて選別すること
②選別した市場で、オンリーワンとなれる強みを伸ばすこと
が重要と言えますね。

