【難易度】★★★★☆
事業承継コンサルタントとしての活動
私はこれまで事業承継コンサルタントとして活動してきました。
多くの中小企業経営者の方に接する機会に恵まれ、これまで数多くの事業承継支援のコンサルティングに携わらせていただきました。
その過程を通じて、「ヒト」を中心とした経営支援の重要性を痛感し、現在の経営コンサルタントとしての方針を明確にすることができたと感じています。
「事業承継」とは企業活動における“特定の経営課題”ではなく、“全ての企業に関わる経営のベースにある課題”です。
なぜなら、
法人は個人とは異なり寿命がなく、永続的な存続を前提としているため、
全ての企業に関わる経営課題と言えます
「事業承継」とは「現経営者から次世代後継者への交代」を意味する狭義的なものではなく、「さらなる発展」のために数十年という時間をかけて取り組むべき一連の企業活動を示しています。
(後継者不在の場合の「従業員が幸せになれる会社のたたみ方」「M&Aによる他の会社への引継ぎ」も事業承継の中に含みます。)
「今」会社が取り組むべき経営課題を明確にして、数十年先を見据えた経営を行っていく、
という点では、通常イメージする経営コンサルティングの ”長期版経営計画の実践” と言えます。
事業承継に対する私の「結論」
事業承継とは・・・
・すべての企業に関わる経営課題である。
・事業承継は次世代までを見据えた長期経営計画(事業承継は中期経営計画の拡張版)であり、
取り組むのに早すぎる、ということはない(=将来対応すればいい、という問題ではない)。
なぜなら、事業承継は承継する時期の「点(短期)」の課題ではなく、
後継者育成から始まり、
承継後の次世代経営チームが軌道にのるまでの「線(長期)」で考えるべき課題だから。
早い時期ほど、対策の選択肢が多く、結果として効果的な対策を講じることができる。
・事業承継は経営革新に取り組む絶好のチャンス。
・決算書に現れない「人」に焦点をあてた対策が重要(後継者、従業員)。
・同族企業は法人と個人の両方の視点でバランス良く対策を講じる必要がある。
社長の勇退後を踏まえたリタイアメントプランニングとセットで考えるべき課題である。
事業承継とは、次世代まで見据えた長期経営計画の実践
多くの経営者は事業承継を先延ばしする傾向
多くの経営者の方は、事業承継という重要な経営課題を先延ばしする傾向にあります。
このことは、私自身、とっても良く理解できます。
なぜなら、
日々の業務で忙しいし・・・
自分が会社を勇退するのはまだまだ先だし・・・
自分が勇退した後のことは何だか寂しくて考えたくないし・・・
現在はとりかからなくても、何かすぐ問題が発生するわけではないし(緊急性なし)・・・
自分は辞めた後も、後継者がんばってもらい、どうにかなるはず・・・自分もそうだったし・・・
などといった理由があるから、とても共感できるものです。
そして何より、事業承継は生涯で1~2回(※)しか経験することがないため、経営課題としての認識はあるものの、漠然として事業承継対策のイメージが湧かないことがあると思います。
※創業社長は自分が勇退する時に1回、2代目以降の方は、①自分が社長就任する時、②自分が社長を退任する時の2回しか通常は経験しないということです
事業を引き継ぐ時に対応すればよい(将来の「点」)との認識
事業承継は承継する時点の「点」の課題ではなく、後継者育成から始まり、承継後の次世代経営チームが軌道にのるまでの「線」で考えるべき課題です。
後継者育成や、次世代経営チームの構築、新体制のもと全社員が一致団結できるような社内統制等、とても時間のかかる経営課題です。
「点」と捉えているため、今はまだとりかからなくても大丈夫、将来対応すればいい問題、と考えがちですが、事業承継の準備に取り組むのに早すぎる、ということはありません。
また、早い時期に取り掛かるほど、対策の選択肢が多く、結果として効果的な対策を講じることができます。
後継者にバトンタッチする直前になって対策を講じようとしても、短期間で実行できるものは少なく、かつ、効果も薄くなります。
事業承継とは、「次世代まで見据えた長期経営計画の実践」であり、”将来” ではなく、”今” 会社が取り組むべきものと言えます。
事業承継は経営革新に取り組む絶好のチャンス
「経営承継」の重要性
事業承継は大きく「資産承継」と「経営承継」に大別できます。
現在の事業承継の多くは、資産承継対策へ偏向していると感じます。
いわゆる税金負担というわかりやすい課題であるため、事業承継=資産承継等の税金対策、との認識になりがちです。
また、税金対策等については専門知識が求められ、社内人材だけで対応することが困難であるため、税理士等の専門家へ依頼する必要があります。
一方、「経営承継」については、自社内で経営のノウハウを引き継ぐことができる、との認識が多く、別途経営承継対策が必要、とか、専門家に支援してもらう、といった発想が出づらい状況だと推察します。
しかしながら、経営承継こそ重要であり、専門家を入れた支援が重要であると言えます。
なぜなら、多くの中小企業の事業承継では、社長が親子間程の年齢差があり価値観も大きく異なるケースが多いため、会社に新しい風を吹き込む意味で、経営革新に取り組む絶好の機会だからです。
事業承継は、時代の変化を捉えたうえで、次世代まで見据えた長期経営計画の立案から始まり、計画的な実行が必要です。
事業承継こそ「両利きの経営」理論が効果的
経営学において「両利きの経営理論」という考えがあります。
経営における「両利き」とは、「知の深化」と「知の探索」という2つの異なるモードを両立させることであり、組織が変化し続ける状態を生み出す、イノベーションの処方箋として最注目されている経営理論です。
この理論こそ、事業承継時にぴったり当てはまるものと考えており、私は大学院の修士論文も「事業承継における両利きの経営理論」というテーマに焦点を当てて執筆しました。
この実践のためには、第三者の経営コンサルタントが入り、早期から計画的に取り組むことが重要になります。
なぜなら、同族会社であれば親子間で様々な感情が絡み合ったりしますし、同族でなければ後継者は先代に気を使いすぎるあまり、将来の会社の繁栄に繋がる可能性のある自身の意見を抑えてしまったりとするから第三者の「調整役」が大変重要になります。
決算書に現れない「人」に焦点をあてた対策が重要(後継者、従業員)
中小企業は人的依存が高い
『事業承継』は税金などの「カネ」や事業用資産の「モノ」の問題と捉えられがちですが、実際には「人」に焦点をあてるべき問題である、と言えます。
【中小企業の特徴】
・社長への依存度が高い
・特定の従業員の替えが効かない
・人的資源に限りがある
感情面における配慮が必要
事業承継では、会社を取り巻く関係者の思惑が複雑に絡み合う経営課題です。
一例として、
【社長の気持ち】 まだまだ自分は現役でいたい!
【後継者の気持ち】早く経営権を譲って欲しい。そりの合わない古参従業員がいて不安・・・。
【従業員の気持ち】自分より経験も少なく、若い後継者の言うことはあまり聞きたくない。
これは、会社ごと個別事情があるため、感情を軽視して事業承継対策を行うと、後々大きな問題に発展しかねず、慎重な配慮・対応が重要です。
組織人事体制の整備
だからこそ、「組織人事体制」の再構築が重要となります。
・仕組みづくり
・組織体制構築
・人材育成
・周囲の人への配慮
・モチベーション向上策 など
これは、先代社長の在任中にこそ取り組んで整備しておくべき経営課題です。
後継者の代になってからやっては、社内の反発等も多くなり、新体制の出だしから苦労することになります。
中小企業では法人と個人のバランスを考慮した対策が必須
中小企業の事業承継では、自社株という社長個人で保有している財産を、税負担を軽減しながら後継者に贈与or買い取ってもらい、経営権を渡す必要があります。
自社株は、あくまで社長個人で保有している財産であるため、所得税、贈与税、相続税等、複雑な問題が絡んできます。
また、在任中の役員報酬や、勇退時の退職金等も法人の視点(法人税)と個人の視点(所得税)を考慮し、全体最適となる金額設定が必要です。
こうした点については、法人単体で考えるのではなく、ファイナンシャルプランニングの観点で個人を含めたトータルな視点が大変重要になります。
第三者による調整の必要性
上記で見てきた通り、「事業承継は、税務、法務だけでなく、感情や企業の個別事情も複雑に絡みあう経営課題」です。
経営承継こそ、専門家の支援を受けながら計画的に実施しなければならないと痛感しています。
事業承継を機会に、さらなる発展を遂げられるか、勢いに急ブレーキがかかるか、大きな岐路になることが多くあります。
事業承継を契機に最適な
・組織・人事戦略
・マーケティング戦略
・オペレーティング戦略
・財務会計戦略
を立案し、計画的な実行支援ができるよう、
また、経営者個人として、勇退後のリタイアメントプランニングに基づき、幸せな生活が送れるよう中小企業診断士、ファイナンシャルプランナーとして取り組んでいきたいと考えています。
会社に関わる全ての方々(社長、家族、従業員、取引先等)の幸せに繋がる支援こそ、私の追求する経営コンサルティングです。