顧客視点で新しいアイデアを!【デザイン思考】

【難易度】★★★★☆

【この記事を読むことで】
・ユーザーのニーズを基にクリエイティブな発想で解決策を見出す「デザイン思考」が把握できます。
・他の思考法(ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、アート思考)との違いが理解できます。

【この記事のPOINT】

デザイン思考とは

商品やサービスを使うユーザーの視点からビジネス上の課題を見つけ、自由な発想で解決策を考える手法デザイン思考といいます。
デザイン思考は、デザイナーやクリエイターが業務で使う思考プロセスを活用し、前例のない課題や未知の問題に対して最適な解決を図るための思考法と言えます。

会社経営においても、前例のない課題に直面したり、商品やサービスの改善策に行き詰まったりした際に役立つ思考法です。

会社の強みや保有技術ではなく、ユーザーの視点で課題を見つけていく点が大きな特徴です

デザイン思考の特徴

(1)問題解決に向けて、ユーザーの「共感」と「満足」に焦点を当てている
(2)問題の定義付けと解決の道筋を明確にしたうで、アイデアの創出と組み合わせの試行錯誤を繰り返し最良の解決策を導く
(3)固定観念を取り去り、前例に捉われない視点で思考する

デザイン思考が注目されている背景

デザイン思考が注目されている背景として、市場構造の変化があります。
これまで、製品やサービスなどを開発する現場では、マーケットやユーザーニーズを”調査”し、”仮説”を設定・検証して製品を開発するという、「仮説検証型」のアプローチが主流でした。

しかしながら、変化が激しく予測困難なVUCAの現代においては、このスタイルがもはや通用しなくなっており、入念な調査を行っても、課題の本質を迅速に捉えることが難しくなっています

また、急速な技術革新により、社会構造が大きく変化していることもあり、イノベーションを導きやすいデザイン思考により、「ユーザー自身も気付いていなかったニーズに応えられている商品」の開発などにも活用されています

アート思考との違い

「デザイン思考」と混同しやすい言葉に「アート思考」という思考法があります。

デザイン思考とアート思考は、ともにアイデアを創出するためのものという点では共通していますが、「誰」を起点としているかが異なっています。

デザイン思考は”ユーザーの視点”で課題を捉えるのに対し、
アート思考は”自分の発想”を元にビジネスのアイデアを生み出します。

つまり、デザイン思考で注目すべきはユーザーニーズであり、すでにある製品やサービスをさらに進化させる場合に有効です。
一方、アート思考で起点となるのは自分が持つ自由な発想です。
ありえないことも含めて発想するので、誰もが思いもつかなかったアイデアを生み出すこともあり得ます。
目的やシーンによって両者を使い分けることが重要です。

(ご参考)
以前、デザイン思考とアート思考に関わる「SEDA(シーダ)モデル」について記載した記事があります。
SEDAモデルでは、4象限で考察するフレームワークで、わかりやすい言葉で表現したのが下図です。

【SEDAモデルイメージ】

デザイン思考がもたらすメリット

商品開発に悩む企業が増える中で注目され始めたデザイン思考は、個人のスキル向上や組織運営面でもメリットがあります。

多くのユーザーに支持される商品の開発につながる

数多くの商品やサービスが存在する今、ヒットしているものはいずれも潜在ニーズを見つけ、それに応えているものです。
デザイン思考でユーザーの深層心理に迫り、満たされていないニーズを見つけることで、ユーザーが本当に求めていた商品の開発につなげられます。

アイデア提案の習慣化

デザイン思考では、“とりあえず”アイデアを提案してみるというスタンスが奨励されているため、失敗したらどうしようという意識を持たなくても良いので、提案が習慣化しやすくなります。

イノベーションの創出

デザイン思考は、従来のような市場中心型のアプローチではなく、ユーザー中心設計の考え方です。
ユーザーのニーズと向き合い、課題の本質に迫っていくものであり、全く新しいアイデアが生まれやすくなる傾向があります。

チーム力の強化

デザイン思考はチームのメンバー同士でのコミュニケーションに重きを置いています。
また、思考を進めるためのプロセスにはメンバー全員が参加し、役職や上下関係に関わりなく自由かつ公平に発言できるため、チームに対する貢献意識も高まるのでチーム力の強化につながる傾向があります。

デザイン思考のプロセス

スタンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所では、デザイン思考を以下5つのプロセスを踏んでいく必要があると提唱しています。

最初に行うのはペルソナの設定です。
ペルソナとは、商品の典型的なユーザー像を示し、顧客対象となるキャラクターを明確にすることです。
年齢や性別、職業、住んでいる地域、家族構成など、実際に存在している人のように具体的に設定することが重要です。

その後で、デザイン思考のプロセスに入ります。

① 観察・共感

ペルソナが抱えている課題やニーズを探るために、ユーザーが商品を使っているところを観察したり、同じ体験をするところから始まります。
具体的には、インタビューやアンケートにより、ユーザーが何に共感しているのか、本当に求めているものは何かを見つけ出します。

商品がどう使われるのか、使うとどう感じるのかを理解した上で、不満な点を見つけていきます。
ここで重要なのは「この世代の人なら、こう思うはずだ」といった思い込みを捨てること、また、聞き取ったユーザーの意見を鵜呑みにしないことです。
ユーザーがどういう想いでそう回答したのかという、本音をしっかりと探り出す必要があります。

② 定義

ユーザーの「共感」をヒントに、ユーザーのニーズを定義すします。
本当は何を実現したいのか、潜在的な課題は何なのかを深掘り、抽出していきます。
なかには、ユーザー自身でもまだ気付いていないニーズもありますので、言語化されている背景にあるユーザーの想いも分析していくことが重要です。

③ 概念化

次に、ステップ②で定義した課題を解決するためのアイデアをどんどん出していきます。
ここでは質より量を重視し、多くのメンバーでブレインストーミングを行うい、制限を設けずにアウトプットすることが効果的です。

④ 試作

③で出た多くのアイデアをもとに、商品やサービスの試作品を作ります。
まだ試作段階ですので、時間やコストを多くかけずに、一度形にしてみることで、新たな視点や問題てに気づくことに繋がります。

⑤テスト

試作品をユーザーに使ってもらい、得られた意見を分析して、ステップ②で定義した課題が解決できているのかを確認します。
改善点が見つかったら再び試作品を作り、テストを繰り返し、より精度の高い製品やサービスを創り上げていきます。

デザイン思考では、課題設定、試作品の改良、結果の分析などを判断する起点はすべてユーザーです。
自社の技術的な強みや組織の都合を判断軸に入れないように留意することがポイントです。

デザイン思考の注意点

デザイン思考は、あらゆる場面に万能ではありません。
デメリットも理解しておきましょう。

ゼロベースで物事を作るには不向き

世の中に全くない新しいサービスを考えるときにデザイン思考は向いていません。
理由は、ユーザーの体験や感情を元に課題を設定して解決する手法だからです。
既存のサービスや製品で、ユーザーの悩みや課題をもとに、従来発見できていなかったものを見出したい時に活用する思考法です。

チームメンバーの選定が難しい

チームメンバーの選定が適切でないと、デザイン思考に取り組んでもよいアウトプットが出ません。
デザイン思考において望ましいチームは、メンバーの多様性があり、率直に意見を言い合える人間関係であることです。
似たような経験をしているメンバーばかりだと、斬新な発想が生まれにくくなりますし、、上下関係が厳しい組織の上司と部下だけでデザイン思考に取り組むと、どうしても上司の意見が優先されがちになるので、その点は注意が必要です。

他の思考法との違い

【思考スタイルの特徴】

ロジカルシンキング(論理的思考)との違い

「ロジカルシンキング(論理的思考)」は、情報を整理し、物事の論旨を明確にする思考法です。
デザイン思考とは、根本的に問題解決のプロセスが異なります。
ロジカルシンキングは「課題や事象」を基に「論理的に」課題解決へ向かっていくのに対し、デザイン思考は「ユーザーのニーズ」を基に「クリエイティブな発想」で解決策を見出します

クリティカルシンキング(批判的思考)との違い

「クリティカルシンキング(批判的思考)」とは、「本当に正しいのか」と疑問を持ちながら効果を検証していこうとする考え方のことです。
論理的・構造的に考えを深めるという点では、ロジカルシンキングにも共通しています。
クリティカルシンキングは「客観的」に課題や解決方法を分析していく思考法であるため、「ユーザーに共感する」「潜在的なニーズを探る」という特徴のあるデザイン思考とは、アプローチの方法が異なると言えます。

アート思考との違い

「アート思考」は、デザイン思考と同様、アイデアを創出するための思考法の1つです。
しかし、デザイン思考とは、起点や活用シーンが異なります。
デザイン思考は「ユーザーニーズ」を起点に、既にある商品やサービスを進化させる場合に有効ですが、アート思考は「事業担当者や企業の自由な発想」を起点に、独創性やオリジナリティーのあるアイデアを生み出す場面で活用されることが多いです。

つまり、それぞれの思考法は場面・状況に応じて使い分ける必要があると言えます

それぞれの思考法の特徴を押さえて、使いこなすことで、経営における適切な意思決定に繋がっていきます。

私もコンサルタントとして、最適な課題検討、解決策の提示ができるよう、このような思考法を用いて、「本質」を見据えたコンサルティングを行っていけるようにして参ります。

【参考書籍】

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